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薬剤師が評価する『ケレンディア』について!! 〜他のMRAと比較して〜


こんにちは。 マサです。

調剤薬局にて薬剤師として働いています。

今回は新しく発売された『ケレンディア錠』について記事にしました。

ケレンディア錠はミネラルコルチコイド受容体拮抗薬として、初めて『2型糖尿病を合併する慢性腎臓病』の保険適応を得た薬です。

ケレンディアの特徴

・非ステロイド骨格を有する選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)

・腎臓だけでなく心臓のミネラルコルチコイド受容体(MR)にも同等の親和性を有している

・MRAとして初めて『2型糖尿病を合併する慢性腎臓病』の保険適応を得た

・尿中アルブミン量を減らし、心不全による入院を減らすエビデンスがある
FIDELIO-DKD試験FIGARO-DKD試験

2型糖尿病性腎症への期待は(個人的見解)

ARBやACE阻害剤、SGLT-2阻害薬を使用していても腎機能低下がある場合に使用する

理由
KDIGOガイドライン2020では、糖尿病性腎症に対する第一選択薬として、RAS阻害薬、SGLT-2阻害薬、メトホルミン(eGFR:≧30mL/min/1.73m2)となっており、MRAは難治例に限り使用が推奨されているため

※2021年に国際誕生となったフィネレノンが、今後ガイドラインの変更に関わるかが楽しみである。

MRAの歴史

スピロノラクトンは、降圧効果や心保護作用などが認められていたが、アンドロゲン(男性ホルモン)受容体やプロゲステロン(女性ホルモン)受容体にも結合してしまうことでの副作用が問題となっていた。

そのため、男性では女性化乳房、女性では月経不順の副作用を生じやすい。

そこで誕生したのがエプレレノン
エプレレノンはスピロノラクトンと同様にステロイド骨格を有するが、アルドステロン受容体への選択性を高めているため、女性化乳房や月経不順の副作用を生じにくい。

ただし、エプレレノンは半減期が約4時間と短く、MR阻害作用が比較的弱いため、降圧効果がスピロノラクトンよりもやや劣っていた。

次に誕生したのがエサキセレノン
初めて非ステロイド骨格を有するMRAである。これにより非常に高いMRの選択性が得られ、グルココイド受容体やアンドロゲン受容体、プロゲステロン受容体など、他のステロイド受容体への副作用が少ないという効果が得られた。

さらに、MRへの高い親和性により、低用量で長期に効果を発揮する。その結果、降圧効果も非常に大きく得られることがわかっている。

腎機能低下者に使用すると、スピロノラクトンやエプレレノンは高カリウム血症やeGFRの低下を起こすことが確認されている。
そのため、MRAが2型糖尿病性の腎機能低下に使用されてこなかった。

エサキセレノンはプラセボと比較して尿中アルブミン量を減らす効果を示しているが、eGFR低下防止作用は示されていない。

そして、次に誕生したフィネレノン
腎臓だけでなく心臓のMRにも同等の親和性を有し、高カリウム血症や腎機能低下といった副作用が少ないことが確認されている。

ただし、『高血圧』の適応がないこと、FEGELIO-DKD試験の結果からも、血圧降下作用が小さい可能性がある。

FIDELIO-DKD試験

Effect of Finerenone on Chronic Kidney Disease Outcomes in Type 2 Diabetes (N Engl J Med)

背景
非ステロイド性の選択的鉱質コルチコイド受容体拮抗薬であるフィネレノンは慢性腎臓病と2型糖尿病の患者を対象とした短期試験でアルブミン尿を減少させた。
しかし、腎臓と心臓血管に対する長期的な影響が不明である。

方法
・二重盲検比較試験によって、CKDと2型糖尿病患者5,734人を1:1でランダムに割当て、フィネレノンまたはプラセボを投与した。
・追跡期間:2.6年
・CKDの定義
①UACR:30〜<300mg/g、eGFR:25〜60mL/min/1.73m2、および糖尿病性網膜症の既往歴
②UACR:300〜<5000mg/g、eGFR:25〜75mL/min/1.73m2
eGFR≧60mL/min/1.73m2の割合は、フィレネノン群:11.2%、プラセボ群:11.9%
・血清K値:≦4.8mmol/L

主要複合エンドポイント
腎不全(eGFR<15 mL/min/1.73m2、eGFRのベースラインからの40%以上の低下、腎臓由来の死亡

二次複合エンドポイント
心血管由来の死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院

結果
主要複合エンドポイント
・フィネレノン群:504/2833(17.3%)、プラセボ群:600/2841(21.1%) HR:0.82(95%Cl, 0.75〜0.99 P=0.03)

・3年後に1つの主要複合転帰イベントを防止するために必要な人数は29人

二次複合エンドポイント
・フィネレノン群:367/2833(13.0%)、プラセボ群:420/2841(14.8%) HR:0.86(95%Cl, 0.75〜0.99 P=0.03)

・非致死的脳卒中においては有意差がなく、それ以外の心血管由来の死亡、非致死的心筋梗塞、心不全による入院においては、フィネレノン群で有意に少なかった

・3年後に1つの二次複合転帰イベントを防止するために必要な人数は42人

カリウム
・高K血症による試験中止発生率:フィネレノン群:2.3%、プラセボ群:0.9%

・高カリウム血症の発生率:フィネレノン群:18.3%、プラセボ群:9.0%

・フィネレノン群における血清K値≧5.5 mmol/L:21.7%、血清K値≧6.0 mmol/L:4.5%

・プラセボ群における血清K値≧5.5 mmol/L:9.8%、血清K値≧6.0 mmol/L:1.4%

血圧への影響
・フィネレノン群において、1ヶ月目のSBP-3.0mmHg、12ヶ月目のSBP-2.1mmHg

・プラセボ群において、1ヶ月目のSBP-0.1mmHg、12ヶ月目のSBP0.9mmHg

有害事象の発生率
・両群において同様:フィネレノン群:31.9%、プラセボ群:34.2%

両群におけるHbA1cと体重への影響
・両群で同様であった

結論
CKD及び2型糖尿病患者では、フィネレノンによる治療によりプラセボよりもCKDの進行及び心血管イベントのリスクが低下した

 

 

FIGARO-DKD試験

Cardiovascular Events with Finerenone in Kidney Disease and Type 2 Diabetes(N Engl J Med)

背景
フィネレノンは2型糖尿病やアルブミン尿が著しく増加した主にステージ3と4のCKD患者において、心腎転帰に好ましい効果をもたらしてくれる。
しかし、2型糖尿病とより広いCKD患者への使用は明らかになっていない。

方法
二重盲検ランダム化プラセボ対照試験。7,437例にフィレネノンとプラセボを1:1に割当て投与。
・追跡期間:3.4年
・CKDの定義
①UACR:30〜<300mg/g、eGFR:25〜90mL/min/1.73m2(CKD stage2 - 4)
②UACR:300〜<5000mg/g、eGFR≧60mL/min/1.73m2(CKD stage1 or 2)
60%以上がeGFR≧60mL/min/1.73m2
・血清K値:≦4.8mmol/L
・RAS系を副作用がでなければ最大量使用

主要複合エンドポイント
心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院

二次複合エンドポイント
腎不全、eGFRのベースラインからの40%以上の低下、腎臓関連死

結果
主要エンドポイント
・フィレネノン群:458/3686(12.4%)、プラセボ群:529/3666(14.2%)、HR:0.87(95%Cl, 0.76〜0.98 P=0.03)
なかでも心不全による入院がフィレネノン群において有意に少なかったHR:0.71(95%Cl, 0.56〜0.90).

・心不全による入院以外では有意差なし

二次複合エンドポイント
・フィネレノン群:350/3686(9.5%)、プラセボ群:395/3666(10.8%) HR:0.87(95%Cl, 0.76〜1.01)で、二次エンドポイントでは両群間に有意な差は認められなかった

・末期腎不全への進展がフィネレノン群(0.9%)、プラセボ群(1.3%) HR:0.64(95%Cl, 0.41〜0.995)であり、フィネレノン群で有意に少なかった

・UACRはフィネレノン群でプラセボ群に比較して32%低下したHR:0.68(95%Cl, 0.65〜0.70)

・腎臓複合アウトカム(eGFRのベースラインからの57%低下、腎関連死)は、フィネレノン群(2.9%)、プラセボ群(3.8%)HR:0.77(95%Cl, 0.60〜0.99)であり、フィネレノン群で有意に少なかった

有害事象の全体的な発生頻度
両群で差はなかった

カリウム
・高K血症による試験中止率(K>5.5mmol/L):フィネレノン群1.2%、プラセボ群0.4%

・高K血症の発現頻度:フィネレノン群10.8%、プラセボ群5.3%
※高K血症:>5.5mmol/Lとなった場合は治療を中止し、≦5.0mmol/Lに低下した場合は治療再開

結論
2型糖尿病および中等度に上昇したアルブミン尿を伴うステージ2〜4のCKD患者、および重度に上昇したアルブミン尿を伴うステージ1か2のCKD患者では、フィネレノン群はプラセボ群と比較して心血管転帰を改善した

他のMRAでケレンディアの代替は可能?

・他のMRAでは『2型糖尿病を合併する慢性腎臓病』の適応がない

・スピロノラクトンでの女性化乳房や月経不順の副作用がない

・他のMRAよりも高カリウム血症のリスクが低い

他のMRAで『2型糖尿病を合併する慢性腎臓病』の適応がない理由
・腎機能低下者に使用すると、スピロノラクトンやエプレレノンは高カリウム血症やeGFRの低下を起こすことが確認されている。

・エサキセレノンは尿中アルブミン量を減らす効果を示しているが、プラセボよりもeGFR低下を防止効果は示されていない。

MRAの違い

スピロノラクトン(先発品名:アルダクトン)

・第1世代に分類され、ステロイド骨格を有する

・ステロイド骨格を有するため、アンドロゲン(男性ホルモン)受容体やプロゲステロン(女性ホルモン)受容体にも結合する。そのため、男性では女性化乳房、女性では月経不順の副作用を生じやすい

・エプレレノンよりも降圧効果が優れている

・重症心不全患者を対象とした試験において、死亡リスクを30%低下させたエビデンスがある(RALES試験

・3剤の降圧薬でも血圧管理が不良な高血圧患者を対象に、4番目の薬剤として追加した結果により、治療抵抗性高血圧患者へのMRA追加が推奨になったエビデンスがある(ASCOT-BPLA試験)

エプレレノン(先発品名:セララ)

・第2世代に分類され、ステロイド骨格を有する

・スピロノラクトンよりもアルドステロン受容体への選択性を高めているため、女性化乳房や月経不順の副作用を生じにくい

・エプレレノンは半減期が約4時間と短く、降圧効果もスピロノラクトンよりもやや劣る

・左室機能障害と心不全を合併した急性心筋梗塞患者の罹患率と死亡率を低下させるエビデンスがある(EPHESUS試験

・左室肥大を有する高血圧患者に、エプレレノン単独、エナラプリル単独、エプレレノン+エナラプリルを投与し、降圧作用、左室肥大抑制作用、尿中アルブミン量低下作用が併用群で増強したエビデンスがある(4E-LVH試験)

エサキセレノン(先発品名:ミネブロ)

・第3世代に分類され、非ステロイド骨格を有する

・非常に高いミネラルコルチコイド受容体選択性がある

・ミネラルコルチコイド受容体への親和性も高いため、低用量で長期の効果を期待できる。そのため、降圧効果も非常に大きいことがわかっている

・尿中アルブミン量を減らす効果を示しているが、プラセボよりもeGFR低下を防止効果は示されていない(ESAX-DN試験

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