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〜薬剤師が評価する 〜『ツイミーグ錠』は『メトホルミン+DPP-4阻害薬』


こんにちは。 マサです。

調剤薬局にて薬剤師として働いています。

今回は2021年8月に新しく発売される予定の糖尿病治療薬『ツイミーグ錠(一般名:イメグリミン)』について記事を書きました。

『ツイミーグ錠』は新しい作用機序に分類され、数年前から話題になっていました。

私が考える『ツイミーグ錠』は「メトホルミン作用+DPP-4阻害薬」です。
ツイミーグの2つの作用(インタビューフォームP.1より)
①インスリン分泌促進作用
②肝臓や骨格筋での糖新生抑制、糖取り込み能改善作用

 

なぜ『ツイミーグ』は『メトホルミン + DPP-4阻害薬』なのか?

ツイミーグの構造式はメトホルミンとほぼ同じです。
そのため、メトホルミン作用がそのままあるように思います。

そして、DPP-4阻害薬とは作用機序も構造も異なりますが、『血糖値が高い時だけインスリン分泌を促す』という作用が同じです。

また、メトホルミンにはGLP-1増加作用もあるようですが、ある研究では「活性型のGLP-1は増加しない」という結果もあったそうです。
そのため、メトホルミンのGLP-1作用は不明な点もあります。
肝臓のグルカゴン抑制効果をうたっている文献はこちら

活性型GLP-1を増やさないという研究結果はこちら

メトホルミンとDPP-4阻害薬に共通することは、「体重を増やすことなく血糖値を下げる」ということです。
ツイミーグも体重を増やすことなく血糖をコントロールする薬と予想します。

メトホルミン作用

メトホルミン作用
① 肝臓からのブドウ糖放出の抑制や、筋肉を中心とした末梢組織でのインスリン感受性を高める作用

ミトコンドリア内電子伝達系複合蛋白 Ⅰ(Complex Ⅰ )を阻害
   ↓
AMPキナーゼ(AMPK)を活性化
   ↓
糖の取込みが促進し糖産生を抑制します。(糖新生抑制)
脂肪酸β酸化が亢進します。

肝臓のAMPKが活性化されると、細胞内脂肪の燃焼が亢進し、インスリン抵抗性の改善につながります。
さらに、糖の取り込みが促進し糖産生を抑制します。(糖新生抑制)

② 便の中にブドウ糖を排泄
PET-MRIを使用して検査した報告があります。
小腸の肛門に近い回腸から先では、「腸の壁」ではなく、便やその他の内容物である「腸の中」にブドウ糖が集まっていることがわかりました。

インスリン分泌作用

インタビューフォームP.1の「開発の経緯」に「ツイミーグはグルコース濃度依存的にインスリン分泌を促す」と記載されています。
これはメトホルミンでは確認されていない作用です。
そもそもメトホルミンは「インスリン分泌を増加さないことで、単剤では低血糖や体重増加に繋がらない」と評価されています。

ツイミーグのインスリン分泌作用機序

NAMPT遺伝子発現増加(NAD+増加)による、インスリン分泌惹起経路と増幅経路への作用

惹起経路:グルコースを摂取した場合にインスリン分泌が起こる経路であり、血糖依存性。

増幅経路:惹起経路を増幅する経路であり、惹起経路が働かないような血糖値が低い状態ではインスリン分泌を増強しないのが特徴。

惹起経路への作用

作用①
ツイミーグを服用すると膵島内ATP量が有意に増加します。
ATPはカリウムATPチャネルを閉鎖させて脱分極を起こします。
脱分局が起こると電依存性のCa2+チャネルが開口し、細胞内Ca2+濃度が上昇します。
それによりインスリン分泌が促されます。

作用②
ツイミーグを服用するとNAMPTが増加します。
NAMPTが増加するとNAD+が増加します。
SIRT1はNAD+の分解反応に関わり、NAD+量が増えると活性化します。
   ↓
膵臓β細胞特異的SIRT1のトランスジェニックマウスを作成したところ、このマウスではグルコース刺激に対するインスリン分泌が促進され、耐糖能の有意な改善が認められました。
一方、SIRT1のノックアウトマウスにおいて、グルコース刺激によるインスリン分泌が障害されていることが報告されています。
膵臓β細胞特異的SIRT1についてはこちら

マウスを用いたNAD+とインスリン分泌促進を調べた研究はこちら
NADワールドにおける新たなる展開:Sirt1と全身性NAD合成系によって制御される代謝・脳機能のリズム

増幅経路への作用

膵細胞内NAD+が増加することで、細胞内Ca2+濃度が増加します。これによりインスリン分泌が亢進します。

なぜツイミーグがグルコース濃度依存的と言えるのか?

ツイミーグはATPを増加させて惹起経路を増強しますが、そもそもグルコースがないと惹起経路はスタートしません。
増幅経路も惹起経路が働いていない状態ではインスリン分泌を促しません。

薬効を裏付ける試験 2)グルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用

海外グルコースクランプ試験(インタビューフォームP.20
2型糖尿病患者に本剤1回1500mg又はプラセボを1日2回7日間経口投与し、最終投与の2時間後に高グルコースクランプ試験を実施したところ、本剤群でグルコース投与直後から45分後の血中インスリン濃度AUC0-45minがプラセボ群と比較して有意に増加した(外国人データ)。
注)本剤の承認された用法及び用量は「通常、成人にはイメグリミン塩酸塩として1回1000mgを1日2回朝、夕に経口投与する。」です。

ツイミーグの試験

TIMES1試験

日本人2型糖尿病患者を対象とした24週間におけるイメグリミン単剤療法とプラセボ比較による有効性、安全性および認容性を検討する試験

対象    :2型糖尿病の日本人212名
期間    :24週
試験方法  :無作為化、二重盲検、並行群間比較試験
ツイミーグ量:1回1000mgを1日2回(2000mg/日)
比較薬剤  :プラセボ
結果
ツイミーグ:-0.72%(ベースライン平均値HbA1c:7.99%)
プラセボ :0.15% (ベースライン平均値HbA1c:7.93%)

プラセボ群に対して有意差をもってHbA1を低下した。p<0.0001(95%信頼区間:-1.041,-0.691)

TIMES2試験

日本人2型糖尿病患者を対象とした、52週間におけるイメグリミンとの併用療法およびイメグリミン単剤療法による安全性及び有効性試験

対象    :2型糖尿病の日本人714名
期間    :52週
試験方法  :非盲検、並行群間比較試験
ツイミーグ量:1回1000mgを1日2回(2000mg/日)
比較薬剤  :DPP-4阻害薬、GLP-1作動薬、チアゾリジン薬、α-GI薬、ビグアナイド薬、SU薬、
グリニド薬、SGLT−2阻害薬、単剤
結果    :ベースラインからのHbA1cの変化量
DPP-4阻害薬(n=63):-0.92%(ベースライン平均値HbA1c:8.23%)
GLP-1作動薬(n=70): -0.12%(ベースライン平均値HbA1c:8.66%)
チアゾリジン薬(n=65):-0.88%(ベースライン平均値HbA1c:8.72%)
α-GI薬(n=64):-0.85%(ベースライン平均値HbA1c:8.37%)
ビグアナイド(n=64):-0.67%(ベースライン平均値HbA1c:8.16%)
SU薬(n=127):-0.56%(ベースライン平均値HbA1c:8.63%)
グリニド薬(n=64):-0.70%(ベースライン平均値HbA1c:8.48%)
SGLT−2阻害(n=63):-0.57%(ベースライン平均値HbA1c:8.50%)
単剤(n=134):-0.46%(ベースライン平均値HbA1c:7.83%)

なぜGLP-1作動薬との併用において効果が劣っているのかは不明です。
今後明らかになるかもしれません。

副作用
単剤投与と比較するとSU薬との併用で低血糖の出現が増加します。
しかし、これはSU薬にツイミーグを追加した影響というよりも、SU薬による影響が大きいと思われます。

ビグアナイド薬と併用した際には腹部症状(下痢、悪心、嘔吐)が多くなります。
これはビグアナイド薬を増量した際にも見られる現象です。

TIMES3試験

日本人2型糖尿病患者およびインスリン製剤を投与しても効果不十分な日本人2型糖尿病患者を対象とした、16週間におけるイミグリミンとインスリン製剤との併用療法とプラセボ比較による有効性及び安全性試験、および36週間の継続投与試験(合計52週)

対象    :インスリン治療で血糖コントロールが不十分(7.5%≦HbA1c≦11.0%)な日本人2型糖尿病患者215名
期間    :二重盲検期16週、非盲検期36週(合計52週)
試験方法  :
二重盲検期(無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験)
非盲検期(非盲検、非対照試験)
ツイミーグ量:1回1000mgを1日2回(2000mg/日)
比較薬剤  :プラセボ
結果
16週(二重盲検期)
ツイミーグ:-0.63%(ベースライン平均値HbA1c:8.74%)
プラセボ :-0.03% (ベースライン平均値HbA1c:8.82%)52週
ツイミーグ:-0.64%(ベースライン平均値HbA1c:8.72%)

ツイミーグの副作用について

なぜツイミーグには乳酸アシドーシスの警告がないのか?

メトホルミンはcomplexⅠを完全阻害するため乳酸アシドーシスを生じる可能性があります。
その分、糖新生抑制効果が強いとされています。

ツイミーグはcomplexⅠを部分阻害するため乳酸アシドーシスを生じにくいとされています。
その分、メトホルミンよりも糖新生抑制効果が弱いとされています。(メーカー談)

その他の副作用
メトホルミンと構造式が似ているため、生じる副作用は胃腸症状が多いようです。
胃腸症状として、便秘、下痢、軟便、腹部膨満、悪心、嘔吐

薬価はトラゼンタ錠5mgとの類似薬効比較

メトグルコ錠250mg 10.1円/錠
メトグルコ錠500mg 13.2円/錠
ツイミーグ錠500mg 34.4円/錠(1日薬価137.60円/4錠)(補正加算なし)

ツイミーグの薬価は類似薬効比較方式にて決定されました。
その比較薬がトラゼンタ錠5mg(137.5円/錠)です。

中医協はトラゼンタ錠5mg 1錠とツイミーグ錠500mg 4錠を同等と判断しているようです。
確かに、ツイミーグの血糖依存的インスリン分泌作用は、DPP-4阻害薬と同じです。
そして最初にも書きましたが、私の印象では「ツイミーグ = メトホルミン + 血糖依存的インスリン分泌作用」です。
GLP-1の様な体重減少作用は期待できなそうなので、トラゼンタ錠との比較はその通り、と思います。
薬価決定方法
類似薬がある場合、類似薬効比較方式という方法で薬価の算定を行います。
同じ効果を持つ類似薬がある場合には、市場での公正な競争を確保する観点から、新薬の1日薬価を既存類似薬の1日薬価に合わせます。

ツイミーグの疑問

ツイミーグにおけるインスリン分泌促進効果以外の効果が、メトホルミンにもあるかもしれません。
その理由は、メトホルミンの作用機序がまだ完全に判明していないためです。
さらに、ツイミーグとメトホルミンの構造式がとても似ているためです。

もしツイミーグのインスリン分泌促進以外の効果がメトホルミンでも期待できる場合、用量調節を行いやすいメトホルミンを選択しやすいかもしれません。

ツイミーグの今後

ツイミーグは世界で初めて日本で発売されます。
アメリカで糖尿病薬を発売する場合は、心血管死死亡率のリスクがないかを確かめる必要があります。
それが日本ではありません。海外で発売され、その辺りのデータが出てくることを期待します。

ツイミーグは、その作用機序から各臓器への負担を減らして臓器保護効果があるかもしれません。
今後の大規模臨床試験がされることに期待します。

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