お薬について

薬剤師のための高血圧治療薬『ACE阻害薬編』 個人的見解を踏まえて!!


こんにちは。 マサです。

調剤薬局にて薬剤師として働いています。

高血圧治療薬について、ガイドライン2019を確認して勉強しなおしています。

そこで今回は、ACE阻害薬についてまとめました。

個人的見解

・各薬剤の強弱は分かりません。

・ARBと比較して降圧効果は劣りますが、冠動脈疾患の予防効果は優っています。

・現在の日本での使用は、虚血性心疾患や心不全患者に多いように思います。

・日本でARBよりもACE阻害薬の使用が少ない理由は、目に見えない冠動脈疾患の予防効果よりも、目に見える副作用が原因だと思います。(副作用:服用者の20〜30%に見られる空咳)
ACE阻害薬は糖尿病患者の腎保護目的に使用したいのですが、日本人との相性の良いDPP -4阻害薬との相性が悪いため、どうしても使用しにくいように思います。

・心不全へのエビデンスが多いのはエナラプリル

 

特徴

降圧効果はブラジキニンによる血管拡張作用(末梢血管抵抗の低下)が主作用とされています。

高血圧患者における心血管イベントや全死亡リスクの低減効果はARBと同等とされています。(文献

BPLTTC試験において、ACE阻害薬の冠動脈疾患発症のリスク低減効果が示されています。そして、ACE阻害薬は、降圧効果とは別に冠動脈疾患の予防効果が確認されています。その後発表されたONTARGET試験によって、ACE阻害薬とARBでは心血管イベント抑制効果は同等(非劣勢)であると結論づけられました。(ACE阻害薬はARBと異なり、降圧効果とは別に冠動脈疾患の予防効果があると考えられています)

糖尿病患者への降圧薬としてARBとどちらが優れているか、という試験があります。結果は両者で有意差はないがACE阻害薬が優れているという結果があります。この比較は直接比較ではなくメタ解析での比較になります。(文献

空咳の副作用(20〜30%)は日本を含む東アジア人に多いとされています。

腎排泄の薬剤が多いです。

血管性浮腫の副作用があります。最近の日本では2型糖尿病薬のDPP−4阻害薬が多く処方されており、その併用によって頻度が増加するという報告があります。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2758288/)

慢性腎臓病にACE阻害薬とARBとプラセボを投与した比較試験があります。ACE阻害薬、ARBともにプラセボと比較して腎不全の確率を有意に低下させました。その効果はACE阻害薬の方が大きかったです。そして、ARBと比較してACE阻害薬は腎不全、心血管死、または全死亡を減らす可能性が高いことが示されました。(文献

EUROPA試験において、心不全を伴わない低リスクの安定冠動脈心疾患患者に対しても一次エンドポイント(心血管死+非致死的心筋梗塞+心停止からの蘇生)を有意に低下しました。

SH基を有する薬剤と有さない薬剤に分類されます。SH基による副作用が心配なため、SH基を有さないACE阻害薬を創薬する流れとなり、現在使用されている多くのACE阻害薬がSH基を有しません。
SH基を有する薬剤:カプトプリル、アラセプリル
SH基を有さない薬剤:カプトプリル、アラセプリル以外
SH基のメリット:酸化ストレスを減少させる
SH基のデメリット:皮疹、味覚障害、骨髄抑制、空咳を引き起こす

イミダプリル(先発品:タナトリル)

・日本製の薬。そのため大規模臨床試験のエビデンスに欠ける
・他のACE阻害薬と比較して空咳が少ない印象がある
・保険適応は「高血圧」、「腎実質性高血圧症」、「1型糖尿病に伴う糖尿病性腎症」

エナラプリル(先発品:レニベース)

CONSENSUS試験:重症心不全患者(NYHA:Ⅳ度)において、心不全治療薬(利尿薬、ジギタリス、血管拡張薬)に追加して死亡リスクを改善することを証明した最初の試験。死亡数は減ったが、突然死に有意差はなかった。

SOLVD試験:左室機能不全を有する慢性心不全患者(NYHA Ⅱ・Ⅲ度)において、心不全の予後改善を示した。全死亡の減少、心血管死の減少、心不全悪化による死亡の抑制、心筋梗塞の抑制などが有意であった。心不全を伴わない不整脈死に差はなかった。

SOLVD Prevention試験:無症候性左室機能不全患者において、心不全の発症を予防することを示した。心不全の発症と入院を有意に抑制した。さらに、投与前のEFが低いほど、死亡や心不全発症に対するエナラプリルの効果が顕著であった。

V-HeFTⅡ試験:慢性心不全患者において、血管拡張薬(hydralazine)+硝酸薬(isosorbide dinitrate:ISDN)とエナラプリルを比較し、両群とも死亡率が低下し、エナラプリル群で有意に死亡率が低下した。NYHA Ⅰ〜Ⅱ度の軽症例で顕著に突然死が減少していた。

・保険適応は「本態性高血圧症」、「腎性高血圧症」、「腎血管性高血圧症」、「悪性高血圧」、「下記の状態で、ジギタリス製剤、利尿剤等の基礎治療剤を投与しても十分な効果が認められない場合 慢性心不全(軽症〜中等症)」
・Tmax:4(hr)、T1/2:14(hr)

リシノプリル(先発品:ゼストリル)

GISSI3試験:急性心筋梗塞後の患者において、リシノプリル群と硝酸薬(nitroglycerin)群、両者併用群を比較し、リシノプリル群において総死亡率および死亡、重篤な心機能障害を併せたエンドポイントが有意に低下した。併用群では総死亡および死亡、重篤な心機能障害のどちらも有意に低下した。

・保険適応は「高血圧」、「下記の状態で、ジギタリス製剤、利尿剤等の基礎治療剤を投与しても十分な効果が認められない場合 慢性心不全(軽症〜中等症)」
・Tmax:6.7 - 6.8(hr)、T1/2:4.4 - 4.5(hr)

カプトプリル(先発品:カプトリル)

ISIS−4試験:急性心筋梗塞またはその疑いのある患者に対して、5週後の死亡率がカプトプリル群で低下した。

SAVE試験:急性心筋梗塞後の左室機能不全患者において、急性期からのACE阻害薬治療が予後を改善することを示した。心不全の悪化だけでなく再梗塞も抑制した点で注目された。

・SH基を有する
・保険適応は「高血圧」、「腎性高血圧症」、「腎血管性高血圧症」、「悪性高血圧」
・Tmax:0.68(hr)、T1/2:0.43(hr)

ラミプリル(日本未発売)

AIRE試験:心不全初見を有する急性心筋梗塞患者において、比較的早期に使用することで全死亡を有意に低下した。

・世界で最も使用されているACE阻害薬の一つ

トランドラプリル

TRACE試験:急性心筋梗塞後の左室機能不全患者において、総死亡、心血管死および突然死の発症を有意に減少した。全心筋梗塞の再発率に有意差はなかった。

・保険適応は「高血圧」
・Tmax:0.8(hr)、T1/2:3.8(hr)

ゼフェノプリル(日本未発売)

SMLE試験:急性前壁梗塞患者において、うっ血性心不全の発症抑制、死亡抑制を有意に示した。

ペリンドプリル(先発品:コバシル)

HOPE試験:左室不全あるいは心不全を有していない心血管イベント発症の高リスク症例について、本剤とプラセボ比較において、本剤は高血圧の有無に関わらず心血管イベントを抑制することを示した(対象例の半数以上が正常血圧)。心血管死、非致死的心筋梗塞、脳卒中、全死亡、血行再建術、心停止、心不全、糖尿病関連合併症のいずれも有意に低かった。

EUROPA試験:心不全を伴わない低リスクの安定冠動脈心疾患患者において、心血管事故抑制効果を検討し、一次エンドポイント(全死亡、非致死的心筋梗塞、不安定狭心症、心停止からの蘇生)の抑制に有効であった。
サブ解析において、β遮断薬併用群においてのみ有用性が認められ、単独では有用性が認められなかった。

・保険適応は「高血圧」
・Tmax:5.0 - 10.7(hr)、T1/2:57.3 – 105.4(hr)

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