服薬指導

薬剤師の服薬指導『行動変容ステージモデルを活用した服薬指導』


こんにちは。 マサです。

服薬指導をしていて、『間食を止めて欲しいけど、言っても止めてくれない』、『運動をして欲しいけれど、言ってもやってくれない』と思うことが多々あると思います。
その時に服薬指導の仕方を意識して変えていますか? 自然と変わっている方も多くいると思います。
今回は、『行動変容ステージモデル』を活用した糖尿病患者さんへの服薬指導を考えてみたいと思います。
読んでみると『その通り』と思うかもしれませんし、『わかってる』と思うかもしれませんが、整理しておくと分かりやすいと思いました。

『行動変容ステージモデル』を理解しても、そんなに上手くいくものではないとは思います。ですが、少しでも患者さんのためになる可能性があるならば、やる価値があると思います。

 

目次
・『行動変容ステージモデル』について
・『無関心期』の服薬指導
・『関心期』の服薬指導
・『準備期』の服薬指導
・『実行期』の服薬指導
・『維持期』の服薬指導

 

『行動変容ステージモデル』は厚生労働省のHPに簡単な説明がありますので、そちらもご覧ください。
こちらをクリック

簡単に言えば、人間の行動には『無関心期』→『関心期』→『準備期』→『実行期』→『維持期』の5つのステージからなっており、ステージごとに必要としているこちらの態度や声かけが異なります。
私ならどのように考え、服薬指導をするか、A:運動しない患者さん、B:間食をする患者さん、についてまとめました。

 

『無関心期』:6ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がない時期(運動する気がない)

行動変容の必要性を正しく理解してもらい、関心をもってもらう必要であり、そのためには嫌がられても、何度も必要性を伝えて根気強く繰り返すしかありません。
その時には、ネガティブな情報だけでなく、ポジティブな情報も同時に伝えていく必要があります。

【重要】こちらの提案を受け入れてもらえないことが当たり前と考え、一方的な指導となるのが当たり前と考えて服薬指導する

A:運動する気がない患者さん

・運動をせずに食事注意だけでは、筋力が減ってしまい体重が増えやすい体になってしまい、後から血糖コントロールが難しくなることがあります。少しずつでも良いので運動を開始しませんか。

・年を重ねると筋力が落ちてしまい、膝や腰の痛みなどによって日常生活に苦労するかもしれません。今から運動を開始することで、その予防と血糖コントロールの両方ができます。

・運動を行うことで筋肉量低下を防止できます。そうなると食事が乱れた時の体重や血糖値の上昇幅を狭くすることができるかもしれません。好きなものを食べるためにも運動を開始してはどうでしょうか。

・このまま血糖値が管理できないと、合併症のリスクが高くなります。足の痺れや感覚低下、眼底出血による視野狭窄や視力低下、視野の歪み、透析に近づいてしまうかもしれません。これからの人生において、なるべく不都合のない生活を送るためにも運動を開始してはどうでしょうか。

・運動を開始すれば、これ以上薬が増えることを防止できたり、薬の増量となる時期を遅らせることができるかもしれません。目に見える効果がすぐに得られないかもしれないけれど、必ず数年後の結果に繋がります。運動を開始してはどうでしょうか。

・運動をすることで、年齢以上の衰えを防止できるかもしれません。周囲から若々しく見られるかもしれません。いつまでも元気な○○さんでいるために、運動を開始してはどうでしょうか。

・運動することで体重が減ったり体力がついたりすると、体が軽くなったり疲れにくくなったりします。生活しやすくなると思うので、運動を開始しませんか。

・(太っている方であれば)ご自身の後ろ姿を見たことはありますか? 先日いらっしゃった患者さんが、自分の後ろ姿を見てショックを受けたそうです。そこから運動を始めました。

・同年代に若々しい方はいませんか? その方はおそらく運動をしています。〇〇さんも始めてみてはどうでしょうか。

B:間食を止める気がない患者さん

・間食を止めないと、体重が増える→血糖値が上昇する→薬が増えるの悪循環に入ってしまうかもしれません。間食を止めませんか。

・間食を止めないと、体重が増えて膝や腰の痛みに繋がるかもしれません。膝や腰の痛みによって活動量が低下すると、より体重増加に繋がります。最終的に認知症になる確率を高めてしまうかもしれません。間食を止めませんか。

・間食を止めないと、糖尿病教育入院をしなければならないかもしれません。そうなる前に間食を止めませんか。

・間食を止めないと、血糖値が上昇して最終的にインスリン注射が必要になるかもしれません。インスリン注射になる前に間食を止めませんか。

・間食を止めないと、血糖値が上昇してしまい、インスリンの単位を増やす必要があります。単位を増やせば体重増加やお薬代の負担が大きくなります。お薬代が増える前に間食を止めませんか。

・間食を止めないと、その姿を見ている家族もあなたと同じ病気や状態になってしまうかもしれません。ご家族のためにも間食を止めた姿勢を見せませんか。

・間食を止めて体重が減ると体が軽くなります。今までできなかったことができるようになったり、疲れにくくなると思います。間食を止めてみませんか。

・(太っている方であれば)ご自身の後ろ姿を見たことはありますか? 先日いらっしゃった患者さんが、自分の後ろ姿を見てショックを受けたそうです。そこから間食を止めました。

 

『関心期』:6ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期

関心はあるけれど行動を起こす意思のない段階です。その背景には行動することや、行動による負担や不安も少なくありません。傾聴しながら、共感しながら受け止めて、信頼関係を築いていくことが特に大切です。
そのために、服薬指導によって行動するための具体的な方法や計画についても正しく理解してもらい、「それなら私にもできる」という自己効力感を高めてもらうことが大切です。
※気持ちがあっても実行できない理由や患者さんの思いを確認。その理由や思いに対して服薬指導をする

A:運動の大切さを理解し、やらなければいけないと思うけれど、最初の一歩を踏み出せない

例えば、運動をする時間を作れない患者さん
・食後にTVを見る時間はありませんか? TVを見ながらエアロバイクをすれば、運動する時間を作らなくて良いです。

例えば、朝しか運動する時間が作れないけれど、朝早く起きる習慣がない方
・朝早く起きることで、1日の時間が長く感じられます。1日を気持ちよく過ごせやすくなりますし、ストレスも溜まりにくくなります。

例えば、どんな運動が良いか決められない患者さん
・外に出て季節を感じることが好きであればウォーキングをオススメします。ただ、夏場の暑さや冬の寒さが気になるようならば、そのシーズンに行う他の運動方法も決めましょう。例えば室内でのエアロバイクがあります。その他、床にシートを引いてその上を滑る有酸素運動もあります。

・なるべく汗をかいたり、寒さを感じたりしたくないのであれば、室内でのエアロバイクをお勧めします。エアロバイクが嫌ならば、ルームランナーの活用をオススメします。ただ、ルームランナーは場所を取るのと、エアロバイクよりも高価になります。

例えば、簡単な運動から開始したいと思う患者さん
・ラジオ体操はどうですか? 身近に感じませんか? Youtubeにもありますし、TVを録画しておいて、好きな時間に行うこともできます。慣れてきたら回数を増やせばよいです。1回15分で行えることもオススメする理由です。

・ストレッチはどうですか? TVやラジオを聴きながらできます。とても簡単です。朝起きてからストレッチをすると1日を気持ちよく始められます。また、朝は筋肉が硬くなっているので、それをほぐすこともできます。夜お風呂から出て行うことで1日の疲れを取ることができ、気持ち良い睡眠を得られるかもしれません。

B:間食を止める大切さを理解し、止めなければならないと思うけれど、最初の一歩を踏み出せない

・毎日食べているのであれば、隔日にしてはどうでしょうか。月・水・金・日は食べて良いと決めてしまうのはどうですか?

・1週間で食べる間食を週の最初に買ってしまい、それ以上食べないように決めてはどうでしょうか。

・どうしても食べたいものを3つ選んでください。それを1週間の決めた日に食べるのはどうでしょうか。間食する日が楽しみになります。

 

『準備期』:1ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期

適切な目標と行動計画を立ててもらうことで、「私ならできる」という自己効力感を高めてもらいながら、実行に移してもらうことが必要になります。
そのために質問をして患者さんの考えを聞きながら、患者さんの決定や不安や問題に対する自己解決を促します。

A:運動の大切さを理解し、やらなければいけないと思う

・まずは1ヶ月継続することを目標にしましょう。1ヶ月継続できてらもう1ヶ月継続しましょう。2ヶ月続くと習慣になります。習慣になってしまえばストレスが減ります。運動する気持ちになったことがとても素晴らしいです。 今日から開始する、としたら嫌ですか? いつからなら開始できそうですか?

・運動する気持ちになったことは素晴らしいことです。現在考えているやり方や計画の中で、邪魔をしそうなことがありますか? 例えば、時々月曜日に用事が入るからできないかもしれない、などです。その時にどうするかも考えておくと、継続しやすくなります。

・開始した時に、想像以上に辛い場合は回数や強度を減らせば良いです。計画は見直して良い、と考えてください。

・目標を目のつく場所に貼っておいたり、携帯の待ち受け画面にしたりすると、常に意識できるのでよいです。カレンダーに書くこともオススメします。

・やる気になったのであれば、実行できると思います。本当にできるか不安があっても、開始してしまえば不安がなくなり自信になります。始めましょう。

B:間食を止める大切さを理解し、止めなければならないと思う

・まずは1ヶ月継続することを目標にしましょう。1ヶ月継続できたら、もう1ヶ月継続しましょう。2ヶ月続くと習慣になります。習慣になってしまえばストレスが減ります。間食を控える気持ちになったことがとても素晴らしいです。今日から開始する、としたら嫌ですか? いつからなら開始できそうですか?

・もし目標通りに間食を控えられなくなるとすれば、どういったことがありそうですか? 家族が買ってくる、誰かと食事をする予定が決まっている、などがあれば、予め対応策を考えましょう。家族には買ってこないようにお願いしたり、買ってきても目の届かない場所においてもらったりしましょう。誰かと食事をするのであれば、その日は間食する日として、間食しない日の予定をずらせば良いです。もしくは、その食事をするために間食を控えるように意識すると良いです。

・(1週間の中で、間食を止める日を決めた場合)カレンダーに印をつけてください。意識が変わります。

・目標を目のつく場所に貼っておいたり、携帯の待ち受け画面にしたりすると、常に意識できるのでよいです。カレンダーに書くこともオススメします。

・やる気になったのであれば、実行できると思います。本当にできるか不安があっても、開始してしまえば不安がなくなり自信になります。始めましょう。

 

『実行期』:明確な行動変容が観察されるが、その持続がまだ6ヶ月未満である時期

「私ならできる」という自己効力感を高めて持続してもらうために、継続して患者さんの考えを聞きながら、患者さんの決定や不安や問題に対する自己解決を促します。

A:運動を実行している、B:間食を止めている・控えている

・努力していることが素晴らしいです。実行していて困ることやこのままでは継続しにくいと思うことはありますか? あれば一緒に対応策を考えましょう。

・継続できている理由がありますか? (理由を確認したら)その理由を忘れないでください。目のつく場所に貼っておくことをオススメします。

 

『維持期』:明確な行動変容が観察され、その期間が6ヶ月以上続いている時期

これまでの努力を賞賛するとともに、今後の持続を促すだけでよく、それ以上に継続的なかかわりを特に必要としません。

A:運動を実行している、B:間食を止めている・控えている

・習慣になりましたね。とても大きな努力をしたと思います。今後も今まで通りに継続してください。

 

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