お薬について

薬剤師のための高血圧治療薬『Ca拮抗薬編』 個人的見解を踏まえて!!


こんにちは。 マサです。

調剤薬局にて薬剤師として働いています。

高血圧治療薬について、ガイドライン2019を確認して勉強しなおしています。

そこで今回は、カルシウム拮抗薬についてまとめました。

個人的見解
・降圧効果に優れているため、ポリファーマシーを防止するためにも血圧治療の第一選択にしたい。
(微量アルブミン尿がある糖尿病患者はRAS阻害薬が第一選択になる)

・反射性頻脈や虚血性心疾患を防止するためにも使用する場合は長時間作用型を選択することがとても大切になる。

・十分な降圧効果が得られるのであれば、N型チャネルも阻害して腎臓の輸出再動脈を拡張し、交感神経系を抑制するシルニジピンを第一選択としたい。
しかし、降圧効果が弱いようであればアムロジピンへの切り替え、長時間作用型のニフェジピンへの切り替えを選択したい。

・グレープフルーツの影響を避けたいようであれば、影響の少ないアムロジピンを選択する。

・心拍数を少しでも減らしたい場合はアゼルニジピンを選択したい。

特徴

・ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は、血管拡張作用が急速で強力であり、心収縮力抑制作用や刺激伝導系の抑制作用は臨床用量ではほとんど見られません。

・Ca拮抗薬は立ち上がりが早いことで急激な血圧低下による反射性頻脈や虚血性心疾患を増悪させる可能性が指摘されているため、緩徐な降圧作用が期待される薬が選択されています。
 ニフェジピンは発売当初、短時間作用型のカプセル製剤でしたが、反射性頻脈などが問題となり、後にL錠、CR錠とTmaxが遅く、T1/2が長い製剤が発売されました。

・副作用としては、低血圧、動悸、頭痛、ほてり、顔面紅潮、歯肉肥厚、便秘などが知られています。
 歯肉肥厚はニフェジピンで多く報告されましたが、その後発売されたアムロジピンやシルニジピンでの報告は少ないです。

・多くがCYP3A4を介した併用に注意が必要です。

・主作用はL型Caチャネル阻害作用による降圧作用です。
 その他N型、T型Caチャネル阻害作用が付加価値となります。

 L型のみ抑制 :ニフェジピン、アムロジピン
 L/N型抑制  :シルニジピン
 L/T型抑制  :エホニジピン、ニルバジピン、アゼルニジピン
 L/N/T型抑制:ベニジピン

 
N型やT型の抑制効果
a)腎臓の輸出細動脈を拡張し、糸球体内圧を低下させることで腎保護作用につながります。

b)しかしながら、輸出細動脈に発現している受容体数がAT1受容体よりも少ないために、輸出細動脈を拡張させる効果はARBよりも弱いです。

c)ARBにシルニジピンとアムロジピンを追加投与したときの蛋白尿減少効果が、シルニジピンにおいて優れている結果があります。ただし、糖尿病患者における蛋白尿減少効果に有意差は認められていません。

d)CARTER試験という蛋白尿減少効果を比較した試験において、シルニジピン群とアムロジピン群では心拍数に差が認められませんでした。N型Caチャネルを抑制することで期待される心拍数上昇抑制作用が認められなかったことが興味深いところです。

アゼルニジピン

OSCAR試験:標準用量のARB単剤で血圧コントロール不良の高齢日本人高リスク高血圧患者において、高用量のARB単剤療法(オルメサルタン40mg/日)と標準用量のARB(オルメサルタン20mg/日)+Ca拮抗薬併用療法(アゼルニジピン8 or 16、アムロジピン2.5 or 5)の心血管イベントの予防効果を比較した試験。
結果は、両群間に有意な差は認められなかった。
しかし、ARB+Ca拮抗薬併用群の方で降圧効果が優れており、心血管合併症のある例に限ると一次エンドポイントを有意に抑制していた。

・最も新しいCa拮抗薬です。
・投与6ヶ月以降では心拍数を減少させる効果が認められています。
・オルメサルタンと唯一の合剤があります
・欠点は併用禁忌薬が多いことです。

アムロジピン

ADVANCED-J試験:ARBを服用していて降圧不十分な2型糖尿病合併高血圧患者において、ARBの増量とCa拮抗薬(アムロジピン)の併用による降圧効果を比較した試験。
結果は、一次エンドポイントである1年後の早朝家庭血圧はCa拮抗薬併用群の方が優れることが示された。
さらに、二次エンドポイントであるeGFR低下とBNP増加もARB増量群で多かった。
(日本の試験、オープンラベル試験、小規模試験)

ALLHAT試験:冠動脈心疾患のリスク因子を有する高血圧患者において、アムロジピン群とリシノプリル群がクロルトリドン群による治療よりも冠動脈疾患あるいは心血管疾患を抑制するかを比較検討した試験。
結果は、致死的冠動脈心疾患または非致死的心筋梗塞の発症は群間の有意差はなかった。
心不全の6年発症はクロルトリドン群と比較してアムロジピン群において有意に多かった。
リシノプリル群ではクロルトリドン群と比較して複合心血管疾患、脳卒中、心不全の発症率が有意に高かった。

 
ELVERA試験:未治療の高齢者の高血圧症の左室筋重量と拡張機能に及ぼす影響をリシノプリルと比較し、両群とも収縮期圧と拡張期圧の同等の低下をもたらし、LVMI(left ventricular mass index:左室心筋重量係数)の有意な低下とE/A(early to atrial filling ratio:早期波最大流速/心房収縮期波最大流速)の有意な延長を示した。左室筋重量減少効果および拡張機能改善効果は同等だった。
 
CAMELOT試験:正常血圧の冠動脈疾患患者において、心血管イベント抑制効果をプラセボと比較し、有意に心血管イベントを抑制することを示した。エナラプリル群でも同様の有効性が認められたが、有意差は認められなかった。アムロジピン群とエナラプリル群に有意差はなかった。なお、どちらも同等の血圧低下を示した。
 
OSCAR試験:標準用量のARB単剤で血圧コントロール不良の高齢日本人高リスク高血圧患者において、高用量のARB単剤療法(オルメサルタン40mg/日)と標準用量のARB(オルメサルタン20mg/日)+Ca拮抗薬併用療法(アゼルニジピン8 or 16、アムロジピン2.5 or 5)の心血管イベントの予防効果を比較した試験において、両群間に有意な差は認められなかった。
しかし、ARB+Ca拮抗薬併用群の方で降圧効果が優れており、心血管合併症のある例に限ると一次エンドポイントを有意に抑制していた。

・血中半減期および作用持続時間が長く、効果発現も緩徐であるため、反射性頻脈やレニン-アンジオテンシン系の活性化を生じにくいお薬です。
そのため、高く評価されて現在もっとも使用される薬剤になりました。

シルニジピン

CARTER試験:RAS系抑制薬(ARB、ACE阻害薬)を投与されている慢性腎臓病を併発した高血圧患者において、L/N型Ca拮抗薬のシルニジピンとL型Ca拮抗薬のアムロジピンの抗蛋白尿効果を比較し、シルニジピン群において蛋白尿進展抑制効果が認められた。

SAKURA試験:CARTER試験で糖尿病患者のサブループではシルニジピンの蛋白尿進展抑制効果が認められなかった。そのため、糖尿病性神経障害が進行した症例では効果が得られないと考え、腎神経機能が損なわれていない初期の腎症患者での腎保護作用を期待して試験が行われた。
対象者はRAS阻害薬で治療中の2型糖尿病と微量アルブミン尿を有する高血圧患者で、シルニジピン群とアムロジピン群に分けて比較検討した。
結果は両群間に有意差は認められなかった。
(日本の試験、オープンラベル試験、小規模試験)

・N型Caチャネルを抑制することで、交感神経系の抑制につながります。そのため、レニンーアンジオテンシン系(RAS系)の抑制につながります。また、早朝高血圧は交感神経系の影響があるとされていますので、その抑制効果も期待されています。

・CARTER試験においてアムロジピンと比較して蛋白尿減少効果が認められており、腎保護効果が期待されています。しかし、2型糖尿病と微量アルブミン尿症をもつ高血圧患者において、アムロジピンよりも優れた腎保護作用は認められませんでした。その後のSAKURA試験でも2型糖尿病と微量アルブミン尿を有する高血圧患者でも、アムロジピンよりも優れた腎保護作用は認められませんでした。

・バルサルタンに追加投与した試験では、追加投与によりバルサルタン単独よりも蛋白尿減少効果が認められました。

ニフェジピン

ACTION試験:症候性安定狭心症患者において、長時間作用型Ca拮抗薬の転帰に及ぼす影響をプラセボ比較で検討し、顕性心不全の新規発症が有意に抑制され、非致死的心筋梗塞には影響を及ぼさなかった。

・降圧効果が最も強力なCa拮抗薬です。

・NOVEL studyにおいて、ニフェジピンCRの薬剤溶出ステント留置後の冠動脈に対する保護効果が確認されています。

ベニジピン

・N型/T型Caチャネルを抑制します。そのため、腎臓の輸出再動脈を拡張されて腎保護効果が期待されます。

・血中半減期は短いですが、吸収された後に細胞質に止まり持続的に作用を発現します。

・房室結節の伝導を抑制しにくいとされています。

・ニフェジピンと比べて降圧効果はマイルドです。

・冠攣縮性狭心症ではベニジピンが第一選択になりやすいです(冠血管への選択性が高いため)。

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