服薬指導

薬剤師の服薬指導『糖尿病性神経障害』について


 

こんにちは。 マサです。

 

私は薬剤師として毎日薬局にて患者さんとお話をしています。

 

糖尿病の合併症に神経障害があると聞いたけれど、どういったものかわからない。足が腐ってしまうことがある、とも聞いたので怖い。

という不安を抱えている患者さんに出会ったことはありませんか?

私の薬局には糖尿病患者さんが多くいらっしゃいますので、そこであったことを紹介したいと思います。

 

 

目次

・神経障害特有の症状はない

・足の潰瘍・切断率は低い

・神経障害を生じる主な原因は高血糖

・神経症状の症状が出る方は約15%

・治療は血糖コントロールと症状に対しての薬、日常生活での注意

・最後に薬剤師としてお伝えする『フットケア』について

 

足の潰瘍・切断率は低い

足の潰瘍や切断率に関する発表が、2017年に開催された第60回日本糖尿病学会年次学術集会にて行われました。

それによると、全糖尿病患者のうち、足に潰瘍を生じる方は0.3%、足の切断になる方は0.05%となっています。

血糖値別の発症率を見ると、HbA1c8%未満の方は約0.25%、HbA1c8%以上の方では0.46%となっています。

 

 

神経障害特有の症状はない

神経障害の症状として多いのが、足先の痛みや痺れ、感覚が鈍くなるなどの感覚異常と、起立性低血圧や発汗異常、便秘・下痢、膀胱の機能障害、無自覚低血糖などがあります。

その他には、手の小指と薬指の動きが悪くなることや片目の動きが悪くなる、手根管症候群(手の親指、人差し指、中指にかけての痺れや痛み)、足の外側から足の背の感覚異常などがあります。

これらは障害を受ける神経によって症状が変わりますし、どの症状が出るかはわかりません。

薬局にて見かけることが多いのは、足先の痛みや痺れ、感覚が鈍くなること、起立性の低血圧、便秘・下痢、無自覚低血糖です。手根管症候群もよく見かけますが、糖尿病の神経障害が原因でないことも多くあります。

この他にも、血糖値が悪くなった時に一時的に手足の感覚に異常を生じることもあります。痛みの出現やこむら返り、痺れなどの症状が出る方がいます。

 

 

神経障害を生じる主な原因は高血糖

主な原因は、高血糖による血流不良や神経に負担をかける物質が溜まることなどにより、神経に十分な酸素や栄養が供給されなくなることや酸化ストレスにより生じます。

その他、高血圧や脂質異常、喫煙、飲酒、肥満などが悪影響を及ぼすと言われています。

 

 

神経症状の症状が出る方は約15%

神経障害患者さんのうち、症状が出る方は約15%程度、症状のない方を合わせると約40%と言われています。

EURODIABの追跡研究では、1,172人の1型糖尿病患者に対して平均7.3年の観察が行われ、約23%の患者が糖尿病神経障害を発症したと報告されています。

 

『症状がないと神経障害があるのかないのかわからない』と不安になるかもしれません。

その通りだと思います。

症状のない方が神経障害を見つけるためには検査が必要になります。比較的簡単に行える検査になります。不安であればかかりつけ医に相談することをオススメします。

 

病院で行われる検査

他の神経疾患が否定され、下記3つの検査のうち2つ確認できた場合に糖尿病性神経障害と診断されます

1.問診による自覚症状の有無を確認

2.アキレス腱反射の確認

3.内くるぶしにて振動を感知できるかどうか

 

さらに、ご自身で毎日足の確認をして、普段と変わりがないかどうかを確認することが大切になります。これを『フットケア』と言います。

 

フットケア』については最後に書いてあります。

 

 

治療は血糖コントロールと症状に対しての薬、日常生活での注意

最も大切なことは血糖コントロールです。HbA1c7%未満を目指し、可能であればさらに下げます。

神経障害そのものを治す薬はありません。

足の潰瘍や切断率からするとHbA1c8%未満でも良いように考える方もいると思いますが、他の糖尿病合併症を考慮すると、基本的にはHbA1c7%未満を目指すことをオススメします。

そこから、さらに下げられる方は下げ、HbA1c7%未満に下げない方が良い方は目標値を変更します。

 

お薬は神経の負担を減らすお薬と、出ている症状に対するお薬があります。

・お薬について

神経の負担を減らすお薬は2つです。1つは神経に負担をかけるルビトールという物質を作られにくくするお薬(エパルレスタット)です。もう1つは、神経の補助をするビタミンB12のお薬(メコバラミン)になります。

エパルレスタットは、症状が中等度までで、糖尿病を発症して3年以内の方への効果は期待できますが、重症例や糖尿病歴の長い方への効果は期待しにくいです。

メコバラミンは、どれほどの効果が得られるか明確にはわかりません。

※どちらのお薬も約3ヶ月(12週間)使用して効果がなければ、それ以上継続しても効果は期待できません。

 

痛みにや痺れに対しては、神経からくる痛みや痺れに効果のある薬(プレガバリン、デュロキセチン)を使用します。ただし、眠気や気持ち悪さなどの副作用を生じる可能性は高いです。

 

・日常生活での注意

起立性低血圧に対しては、急に立ち上がらない、急に頭を動かさない、弾性ストッキングを活用して、足や下腹部を圧迫することが有効と言われいます。

ただし、足のキズや潰瘍などがある方は、弾性ストッキンが悪影響を及ぼす可能性があるため、使用前にかかりつけ医に相談することをオススメします。

 

腸の動きが悪いことで便秘になっている場合、不溶性の食物繊維が多くなるとより便秘があっかします。水溶性食物繊維を意識しることをオススメします。

 

無自覚低血糖は、低血糖症状を感じにくくなっています。

そのため、症状を感じた時にはかなり進行している可能性が高いため、すぐに対処する必要があります。

日頃からブドウ糖を携帯し、低血糖症状が現れたらすぐに対応するように意識する必要があります。

 

手根管症候群は、整形外科にて対応してもらうようにする

 

無自覚心筋梗塞の方と何度かお会いしたことがあります。本当に自覚症状がありません。ですが、心電図を行うとすぐに入院が必要なレベルということもあります。最近では、『病院の駐車場から病院まで歩いた時に息苦しさが出たので医師に相談したら心電図を行ってくれた。そうしたらすぐに救急車を呼ばれて即入院となり、カテーテル治療を行った』という患者さんがいました。

 

 

最後に薬剤師としてお伝えする『フットケア』について

『フットケア』という言葉を聞いたことがありますか?

『フットケア』とは日頃から足の状態を確認し、ケアをしていくことになります。

具体的には、

毎日足を確認する → いつもと違ったことはないか確認する。足の感覚が鈍くなっている方は痛みを感じにくく、怪我をしたことに気づかないことがあります。毎日お風呂から出たら行うようにしましょう。

深爪をしない → 爪切りを面倒くさがらずに、こまめに切ることで深爪を防止します。

足を清潔にする → 毎日指の間までしっかり洗いましょう。洗う際は石鹸を使用しましょう。乾燥している場合は保湿クリームなどを使用しましょう。

足に合った靴を履く → 歩くときにはしっかりとクッションがある靴を選びましょう。履いた時に圧迫感などがないように、足にあったサイズを選びましょう。

靴下を履いて過ごす → 水虫や傷の予防になります。5本指靴下をオススメします。生地は通気性の良い綿素材をオススメします。

やけどに注意する → 冬場の湯たんぽやコタツ、電気毛布、ホッカイロなどの低音やけどに注意しましょう。夏場の砂浜にも注意しましょう。

になります。

 

見落としがちなのが水虫です。夏場になると再発する方や、足がかゆくなったりムズムズしたり、皮が剥けることはありませんか?

水虫が悪さをすることもありますので、皮膚科を受診してきちんと診断・治療することをオススメします。よく症状がなくなると治療を自己中断する方がいますが、完全に治ったかどうかは検査をしないとわかりません。医師から完全に治ったことを告げられるまでは、しっかり治療を続けましょう。

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