こんにちは。マサです。
今回は、
『糖尿病には目の合併症があると聞いたけれど、具体的にどういうものかわからない』と、患者さんから相談を受けたことはありませんか?
糖尿病の合併症には、細い血管に生じる合併症(網膜症、腎症、神経障害)と太い血管に生じる合併症(心筋梗塞、脳梗塞、動脈硬化)などがあります。
今日は目の合併症である網膜症について、私が服薬指導をしている記事にしたいと思います。
結論
・きちんと血糖値をコントロールする
・きちんと眼科を受診する
目次
・目の網膜の血管は詰まりやすく切れやす
・糖尿病を発症してから15年で約50%の方が網膜症を発症する
・網膜症の初期は症状がない
・治療は悪化させないため
・直接、網膜症に効果のあるサプリメントはない
・最後に薬剤師として患者さんに伝えていること
なぜ目に合併症を生じるの?
目の合併症は、主に目の奥にある網膜に障害を起こすことで生じます。そのため『糖尿病性網膜症』と言います。この網膜の血管は細い血管なので、詰まりやすく切れやすくなります。
血糖値が高い状態は、血管の中に不純物が多い状態です。不純物が多いということは、血流が悪くなって血管をつまらせることや血管の壁に傷をつけやすくなります。これが目に合併症を起こす理由です。
糖尿病患者さんの約3人に1人が網膜症を生じていると言われています。
糖尿病を発症してから15年で約50%の患者さんが網膜症を発症する
糖尿病を発症してから5年で約10%、10年で約30%、15年で約50%、20年で約70%の発症率と言われています。糖尿病の期間が長ければ長いほど合併症を発症しやすくなります。
また、血糖値が高ければ高いほど、より早期に発症します。HbA1c8%以上の方は、10年ほどで40%以上の方に発症すると言われています。
網膜症の初期は症状がない
網膜症の初期段階では自覚する症状がほとんどありません。中等度に進行すると目のかすみを生じることがあります。ただ、初期・中等度では目立った自覚する症状がない、と考えてください。もちろん検査をすればわかります。
重度まで進行すると、出血による飛蚊症や視野の一部が黒くなって見える、視野が狭くなる、視力が低下する、ものが歪んで見える、最悪の場合失明になります。
要するに、自覚する症状が現れた時には、だいぶ進行しているということです。
特に網膜の中心である黄斑部に詰まりや出血を生じると、症状が重症化しやすくなります。
治療は悪化させないため
・治療について
・発症・悪化させないために
・眼科受診について
治療について
レーザー治療、手術、注射など、目の状態に応じて治療を行いますが、どれも元の状態に戻すことはできません。今よりも悪化させないことが目的の治療になります。
そんな中、最近新しい注射薬が発売され、視力回復効果が期待されています。ただ、効果が長続きしなかったり、値段が高かったり、効果が期待できる方が限られていたりと、十分な満足が得られないかもしれません。
こう言ってしまうと、『それならば治療の意味がないのでは?』と考える方もいると思います。
網膜症の進展抑制のために行うレーザー治療は、視力悪化のリスクを50%以上低下させたという報告もあります。なので、治療はした方が良いです。
発症・悪化させないために
網膜症の治療は悪化させないことが目的となります。なので、いかに合併症を生じないようにするかがとても大切になります。そのためにも、HbA1c7%未満、空腹時血糖値110mg/dL未満、食後2時間値180mg/dL未満を目指し、可能であればさらに下げます。
HbA1cが1%上昇すると、糖尿病性網膜症の発症が1.36倍に、進行が1.66倍に上昇すると言われています。
ただし、急激な血糖コントロールは、治療初期の糖尿病網膜症の悪化(出血)に繋がる可能性が指摘されているため、血糖コントロールは徐々に行うことをオススメします。1ヶ月でのHbA1cの低下は1%までをオススメします。
さらに、糖尿病治療歴が10年以上になると、網膜症の進行リスクが増すため、なるべく早期から血糖コントロールを開始することをオススメします。
眼科受診について
最初は検査の都合で月に数回の受診が必要となるかもしれません。
何もなければ年に1回の定期検査をオススメします。
軽度であれば、3ヶ月から半年に1回の定期検査、中等度であれば毎月から3ヶ月に1回、重度であれば毎月の受診をオススメします。
(目の状態や医師の考えによって変わります)
直接網膜症に効果のあるサプリメントはない
血管への負担を減らすために『ビタミンE』のサプリメント(抗酸化作用)や網膜の栄養となる『ルテイン』のサプリメントをオススメします。
かかりつけの病院にて紹介してくれるものがあるかもしれません。
最後に薬剤師として患者さんに伝えていること
今日は庭に寝転がってペルセウス座流星群を見ました。
この記事を書いていたこともあり、以前経験したことを思い出し、不自由なく見えることの大切さを再確認しました。
それは数年前、左目の上から下に黒い液体が滝のように流れるように見える経験でした。その後しばらくは黒いカーテン越しに世の中を見ていました。
検査の結果、硝子体剥離と診断されました。出血したことが原因でした。
当時は、『これからは黒いカーテン越しに世の中を見ていくことになるかもしれない』と、恐怖と不安を感じました。
幸い何の後遺症もなく元に戻りましたが、今でも年に1回は定期検診を受けています。
現在、目に異常のない方は、今の状態を維持しませんか。 問題なく見えることが当たり前ではないですよ。
不幸にも異常が出てしまった方は、これ以上の悪化を防止しませんか。