お薬について

DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬ではどちらを選択するか?


こんにちは。 マサです。

今回はインクレチン関連薬について記事にしたいと思います。

2021年に経口GLP-1受容体作動薬が発売になります。
従来のGLP-1製剤は注射剤しかなかったため、患者さんへの使用が限定的であったと思います。
しかし、経口のGLP-1製剤が発売された場合、DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬のどちらを使用することが患者さんにとって有益になるのかを考えたいと思います。

結論

胃腸症状の副作用が許すならば、有益な薬剤はGLP-1受容体作動薬

理由
1.心血管系へのエビデンス
2.HbA1c低下効果、体重減少効果
3.胃腸症状の副作用

心血管系へのエビデンス

DPP-4阻害薬には心血管系イベントをプラセボ比較した試験がいくつかありますが、非劣勢は示しても、有意差を持って減少させるエビデンスがありません。

今回発売されるリベルサスのPIONEER6試験において非劣勢は確認されましたが、有意差をもって減少させることは確認できませんでした。

しかし、同成分の注射剤におけるSUSTAIN6試験では、有意差をもって減少させることが証明されています。

また、他のGLP-1製剤には同じプラセボ比較において有意差をもって心血管系イベントを減少させるエビデンスがあります。

HbA1c低下効果、体重減少効果

経口GLP-1製剤とDPP-4阻害薬を比較した試験が2つあります。
PIONEER3とPIONEER7です。
どちらも対象薬はシタグリプチン100mgです。

PIONEER3

目的
メトホルミン単剤投与下またはスルホニル尿素薬併用の2型糖尿病患者において,GLP-1受容体作動薬セマグルチドを追加で経口投与した場合の有効性および長期有害イベントのプロフィールをシタグリプチン100mg経口投与と比較
・一次エンドポイントはベースラインから26週後までのHbA1cの変化
・二次エンドポイントはベースラインから26週後までのBMIの変化など

結果
・HbA1cの変化について,シタグリプチン100mg群にくらべ,セマグルチド7mg群(群間差-0.3%[95%CI -0.4 to -0.1],p<0.001),14mg群(-0.5%[-0.6 to -0.4],p<0.001)で有意に減少した。

一方,セマグルチド3mg群のシタグリプチン100mg群に対する非劣勢は示されなかった(非劣勢マージン0.3%)。

・体重の変化についても,シタグリプチン100mg群にくらべ,セマグルチド7mg群(群間差-1.6 kg[95%CI -2.0 to -1.1],p<0.001),14mg群(-2.5 kg[-3.0 to -2.0],p<0.001)で有意に減少した。

結論
メトホルミン服用中もしくはメトホルミンとSU薬服用者に経口セマグルチド7mgと14mgは、シタグリプチン100mgよりもHbA1c低下作用が強く、体重減少作用も強い

PIONEER7

目的
コントロール不良の2型糖尿病患者において,適宜用量調整による経口GLP-1受容体作動薬セマグルチド 1日1回の有効性と安全性を,固定用量の経口DPP-4阻害薬シタグリプチン100 mg 1日1回と比較
・一次エンドポイントは52週後におけるHbA1c<7%の達成率
・二次エンドポイントはベースラインから52週後までの体重変化
・経口セマグルチドは,3 mgより開始し,8週ごとにHbA1cの値および消化管の認容性(嘔気または嘔吐)を評価し,3mg,7mg,または14mgへと,適宜用量を調整するものとした(各評価時にHbA1c<7%の場合は,用量はそのまま維持し,HbA1c≧7%で,中等度/重度の嘔気または嘔吐の報告が3日以上ない場合はひとつ上の用量に変更)。
経口sitagliptinは固定用量100mgを1日1回投与

結果
・HbA1c<7%の達成率は,セマグルチド群でシタグリプチン群に比べ,有意に高かった(58%[134/230例] vs. 25%[60/238例])。

・HbA1c<7%達成のオッズ比(OR)は,セマグルチド群でシタグリプチン群に比べ,有意に良好であった(OR 4.40,95%CI 2.89 to 6.70,p<0.0001)

・体重の変化は,経口セマグルチド群でシタグリプチン群に比べ,有意に減少した( -2.6kg[SE 0.3] vs. -0.7kg[SE 0.2],推定治療差[ETD] -1.9kg,95%CI -2.6 to -1.2,p<0.0001)

結論
経口セマグルチドを嘔気と嘔吐が許すならば8週毎、3mgから最大14mgに増量し、経口シタグリプチン100mgと比較した結果、経口セマグルチド群においてHbA1c7%未満達成者数が2倍以上多く、体重は2kg程度多く減少した。

胃腸症状の副作用

こちらもPIONEER3とPIONEER7の比較試験
どちらも対象薬はシタグリプチン100mg。

PIONEER3

吐き気
3mg 7.3%
7mg 13.4%
14mg 15.1%
対象薬 6.9%

下痢
3mg   9.7%
7mg 11.4%
14mg 12.3%
対象薬 7.9%

嘔吐
3mg 2.8%
7mg 6.0%
14mg 9.0%
対象薬 4.1%

食欲不振
3mg 1.7%
7mg 3.0%
14mg 6.9%
対象薬 3.0%

PIONEER7

有害事象の発生は,経口セマグルチド群78%(197/253例),シタグリプチン群69%(172/250例)であり,経口セマグルチド群では嘔気がもっとも多い有害事象だった(21%[53例])。シタグリプチン群では,試験期間中に死亡が2例あった。

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