こんにちは。 マサです。
私は保険薬局にて毎日患者さんに服薬指導をしています。
以前の私は、『痛風(高尿酸血症)の患者さんには何を確認して、何を服薬指導すれば良いかわからない』と悩むことがありました。
薬はシンプルだし、患者さんもあまり心配していないし、どんな服薬指導をすれば患者さんのためになるか考える日々でした。
今回はそんな『痛風(高尿酸血症)』について記事を書きました。
『痛風(高尿酸血症)』の服薬指導は食生活の指導がメイン
治療は『痛風関節炎·痛風結節』と『無症候性高尿酸血症』の2つ分けて考えますが、どちらも糖尿病や高血圧と同様に、薬を使用しつつ食事注意をしながらコントロールします。
一部、運動選手や体を鍛えることで尿酸値が高くなる方がいます。その方は食事注意も考えますが、メインは薬物治療になると思います。
食事指導
尿酸値上昇防止のために
・肥満やアルコール、糖質は尿酸値上昇につながるデータがあります。
痛風発作予防のために
・糖質、肉類·魚介類の過剰摂取は痛風の発症頻度が増加するというデータがあります。
尿酸値低下のために
・乳製品やコーヒーが痛風の発症頻度を低下させるデータがあります。
・ビタミンC、DASH食、地中海食、果物·大豆食は尿酸値を低下させるデータがあります。
新規痛風発作予防のために
・アルコールは量が増えるほど痛風発作の頻度を高めます。試験では、最も摂取の多い群では、非摂取群と比べて約2倍頻度を高めます。
・過剰な糖質も発症頻度を約1.5倍高めます。
・過剰な肉食·魚介食も発症頻度を約1.5倍に高めます。
服薬指導集
・アルコールはプリン体0であれば良い、と考えている患者さんがいますが、アルコールそのものが尿酸値を上昇させるため、控えることをオススメします。
・果物は高尿酸血症によいと言われていますが、そればかりになると糖質が過剰となりますので、反対に肥満や尿酸値の上昇を招きます。果物の1日量は拳2個分までをオススメします。バナナでは2本、りんごでは1個、みかんではMサイズ4個、梨では1個、柿では2個、桃では2個、マスカット20粒程度です。
(※これは1日1種類として考えた量です。また、糖尿病の方は半分量までと考えてください)
・1日のアルコール量は、ビールなら350mL、日本酒なら1合、ウイスキーならダブル1杯(60mL)、焼酎0.5合程度、ワインは180mL(グラスワイン2杯)が目安になります。
・体重が多いと尿酸値が上昇します。BMI22を目指しましょう。
・体重管理のために糖質制限を行うと、おかずである肉や魚の量が増えやすくなります。しかし、それは尿酸値を上げることにつながります。バランスを考える必要があります。
・夏場の熱中症対策として、スポーツ飲料を飲み過ぎてしまうと、含まれている糖分が尿酸値を上げてしまいます。家の中で過ごす方であればスポーツ飲料は必要ありません。麦茶をオススメします。麦茶で心配ならばカロリー0のスポーツ飲料をオススメします。暑い中半日屋外で作業する場合であればスポーツ飲料は500mLで十分です。スポー飲料と水や麦茶、お茶などを交互に飲めば良いです。
・日頃からカロリーのある甘いジュースを飲む習慣を控えましょう。
・乳製品には尿酸値を低下させるデータがあります。ただ、乳製品には乳糖や脂肪分がありますので、飲みすぎによる血糖値上昇や体重増加に注意が必要です。牛乳は1日コップ1杯200ccまでにしましょう。チーズは脂肪分が多いので、カットチーズであれば2個程度まで、ヨーグルトは糖分が気になりますので、1カップ(80g)程度を目安にすることをオススメします。
・コーヒーには尿酸値を低下させるデータがあります。ただ、コーヒーの多量摂取は、摂取カフェイン量が増えるため睡眠低下に繋がる可能性があります。睡眠低下は肥満につながりやすくなりますので、注意が必要です。
・ビタミンCが尿酸値を下げるデータがあります。しかし、尿酸結石のリスクが高まる可能性があります。海外ではビタミンCの摂取を控えるように記載されているガイドラインもあります。
・腎臓負担を減らすために、減塩を心がけましょう。
・レバー、カツオ、マイワシはプリン体が多いので控えましょう。
・鶏ガラスープや豚骨スープにはプリン体が多くあります。スープを飲み切らずに残しましょう。
高尿酸血症の定義
高尿酸血症の定義は、男女とも『血清尿酸値7.0mg/dLを超える』です
高尿酸血症の治療は、『痛風関節炎·痛風結節』と『無症候性高尿酸血症』の2つに分けて考える
『痛風関節炎·痛風結節』は治療が必要です。なぜなら、治療しないと患者さんのQOLが低下してしまう可能性が高いからです。
『無症候性高尿酸血症』の治療が必要かどうかは明確な結論がありません。
『痛風関節炎·痛風結節』について
・『痛風関節炎·痛風結節』の患者さんは血清尿酸値6.0mg/dL未満を目指した薬物治療が必要
・使用する薬剤は尿酸産生阻害薬
・痛みが出た時の対応
『痛風関節炎·痛風結節』の患者さんは血清尿酸値6.0mg/dL未満を目指した薬物治療が必要
治療しないことで、日常生活に影響を及ぼし、QOLが低下する可能性が高いからです。
なぜ治療が必要かと言いますと、
↓
尿酸プールが増加
↓
関節や腎尿酸系に尿酸ーNa(MSU)が結晶として析出
↓
尿酸結晶を白血球が貪食
↓
炎症を惹起するサイトカイン分泌
↓
痛風関節炎
↓
結節による関節肥大・変形(QOL低下)
となるからです。
よって、『痛風関節炎』を生じないことが大切です。
どうすれば尿酸プールを増加させないかを考えます
血清尿酸値が7.0mg/dL以上になると尿酸プールが増加します。
ただ、7.0mg/dLを目標にしてしまうと7.0mg/dLを超えてしまうこともあり、尿酸プールの正常化に長期間を必要とします。そのため、血清尿酸値6.0mg/dL未満を目標とします。結節の早期縮小を目指すためには5.0mg/dL未満を目指します。
海外では、血清尿酸値5.0mg/dL未満とするガイドラインも多くあります。
使用する薬剤は尿酸産生阻害薬
痛風結節の縮小率と結節数において、アロプリノールとフェブキソスタットを比較した試験があります。結果は両者に差はありませんでした。
どちらを使用しても良いと思いますが、アロプリノールは中等度以上の腎機能低下者には使用できません。
アロプリノールにはジェネリック医薬品がありますので、価格から見るとアロプリノールが選びやすく、1日1回ということや腎機能の考慮が不要という使いやすさから見るとフェブキソスタットを選びやすくなります。
痛みが出た時の対応
使用する内服薬としてはNSAIDs、ステロイド、コルヒチンの3種類があります。
3種類を比較した試験はないようですが、NSAIDsと経口ステロイドでは効果に違いはないと言われています。
日本で『痛風発作』の保険適応のあるNSAIDsは『プラノプロフェン』と『ナプロキセン』の2種類のみです。痛み止めとしての効果は『ナプロキセン』の方が強いです。
痛風発作に対するNSAIDsの試験では、インドメタシン、ジクロフェナク、ナプロキセンの3種類がよく使用されています。
痛風ガイドラインには、コルヒチンの高用量と低用量について記載があります。
コルヒチンの高用量と低用量の比較では、その効果に差がないとされています。ただ、高用量では下痢などの胃腸障害の発症が多くなります。そのため、ガイドラインでは低用量の使用を推奨しています。
『無症候性高尿酸血症』について
·治療する必要があるのか?
·使用する薬剤は尿酸排泄促進薬と尿酸産生阻害薬
『無症候性高尿酸血症』は治療する必要があるのか?
海外では『無症候性高尿酸血症の段階で、尿酸コントロールを痛風や腎障害および心血管イベントの予防目的では行わない』としています。
日本では、血清尿酸値が高血圧と脳·心血管病のリスクと関連するか否かを検討した観察研究において、明確な結論が出ていません。
しかし、血清尿酸値が9.0mg/dL以上では痛風発症リスクが高くなるとされているため、9.0mg/dL以上は生活指導後に薬物治療を考慮します。
また、キサンチン酸化還元酵素阻害剤による薬物治療は腎障害進展抑制に有効である可能性が示唆されています。
そのため、治療目的は痛風発作予防と腎機能保護になります。薬を使用しない治療も間違いではありません。
使用する薬剤は尿酸排泄促進薬と尿酸産生阻害薬
・病型によって使用する薬を選択しますが、腎機能が低下している患者さんでは産生阻害薬を使用します。
また、ベンズブロマロンは肝機能障害の注意、尿路結石などのリスク上昇があります。使いやすさを考えると尿酸産生阻害薬を選択します。そのため、日本では使いやすいフェブキソスタットの使用が多くなっています。
・海外では、アロプリノールが第一選択になっている国もあります。これは、費用対効果を考えることや、ある試験においては、フェブキソスタットよりもアロプリノールにおいて心関連イベントの発症率が優位に低い、というデータが背景にあるようです。