服薬指導

『新型コロナウイルスと季節性インフルエンザ』との比較から考える服薬指導


こんにちは。 マサです。

調剤薬局にて薬剤師として働いています。

2020年11月以降、新型コロナウイルスの第3波があって感染者数が増加しています。
第1波や第2波とは違って終息する気配が見られません。
新型コロナウイルスに慣れてきていることや、気温が下がったことでウイルスが活発になったことが原因として考えられます。

お正月に初詣に来た人へインタビューをしている映像を見ました。
その人は、「今年は新型コロナウイルスが終息してほしい」と言っていました。
私はこれを見た時に違和感を覚えました。

『新型コロナウイルスを終息させたいのであれば、初詣には出かけずに自宅にいてください』と訴えたくなりました。

あなたはどうですか?

服薬指導

マサ
新型コロナウイルスは、季節性インフルエンザよりも死亡率と人工呼吸器の使用率が高く、退院までの日数が長くなります。
上記による影響と医療関係者が感染しないように従来以上の対策を取ることでの負担が、医療崩壊を招いてしまいます。
さらに、医療関係者が感染してしまうと、医療資源があっても治療できる医療者がいなくなってしまいます。
決して『インフルエンザと同様』と安易に考えないでください。
医療崩壊すると、新型コロナウイルス以外の治療が必要な病気を、治療できなくなってしまう可能性があります。
既に海外では、限りある医療資源をどの患者さんに使用するか、命の選択をしている国もあります。
一人ひとりが危機感をもって、できる対策をとって欲しいです。
決して新型コロナウイルスに慣れてしまってはいけません。

日本の状況

日本における新型コロナウイルスの死亡率は1.47%です。
季節性のインフルエンザの死亡率は、0.1%程度とされいます。

新型コロナウイルスの臨床症状は?

症状はインフルエンザや感冒の初期症状と似ています。そのため、新型コロナウイルスとの区別が困難です。

頻度が高い症状は発熱、咳嗽、倦怠感、呼吸困難。

下痢は約1割、味覚障害は約17%、嗅覚障害は約15%の患者さんで確認されています。
味覚障害や嗅覚障害は海外の報告よりも少ない。

入院までの中央値は7日間。入院期間の中央値は15日。

入院を要した2,600例のうち酸素投与を必要としない患者さんが62%、酸素投与を必要とした患者さんが30%、人工呼吸管理やECMOによる集中治療を必要とした患者さんが9%
新型コロナウイルス感染症 診療の手引き第4版より

なぜ新型コロナウイルス感染症では医療崩壊を起こすの?

季節性インフルエンザウイルスの症状は長くても1週間程度です。しかし新型コロナウイルスでは2〜3週間程度続くことが多いです。
そのため、入院期間が長くなることで病院ベッドの空きがなくなることや、重症化することで人工呼吸器などの医療資源が不足してしまいます。

さらに、新型コロナウイルスは現在指定感染症に指定されているため、感染症法に基づく多くの下記の措置が必要です。

『疑似症患者への適応』、『無症状病原体保有者への適応』、『診断・死亡したときの医師による届出(直ちに)』、『積極的疫学調査の実施』、『健康診断受診の勧告・実施』、『就業制限』、『入院の勧告・措置』、『検体の収去・採取等』、『汚染された場所の消毒、物件の廃棄等』、『ねずみ、昆虫等の駆除』、『生活用水の使用制限』、『建物の立入制限・封鎖・交通の制限』、『発生・実施する措置等の公表』、『健康状態の報告、外出自粛等の要請』、『都道府県による経過報告』

これに対し、季節性インフルエンザでは

『診断・死亡したときの医師による届出(7日以内)』、『患者情報等の定点把握』、『積極的疫学調査の実施』

の3つです。

『疑似症患者への適応』により濃厚接触者に対する対応が必要になり、『無症状病原体保有者への適応』により無症状であっても症状がある人と同じように対応する必要があり、医療者側の負担が増えます。
『就業制限』によって、新型コロナウイルスに感染した医療者は医療を行えません。それが人員不足を招きます。
『建物の立入制限・封鎖・交通の制限』により、病院でクラスターが発生した場合は、消毒を終えるまで診療ができません。

これらが重なって医療崩壊を招きます。

厚生労働省は2020年12月17日に厚生科学審議会感染症部会を開催しました。
そこで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、2021年1月31日に期限を迎える指定感染症の指定を1年間延長することを提案し、了承されました

新型コロナウイルス感染症を移しやすい期間はあるの?

11月19日のThe Lancet Microbeに発表された文献があります。

その文献では、発症後5日間が最もウイルスを感染させやすい時期と報告されています。
またこの報告では、「ウイルス排出期間は2週間以上あったとしても、生きたウイルスの排出期間が発症から5日目以降は低下し、9日目以降に生きたウイルスを検出した研究はなかった」と報告しています。
そのため、何かしらの症状が現れたらすぐに自己隔離することが大切です。

SARS-CoV-2, SARS-CoV, and MERS-CoV viral load dynamics, duration of viral shedding, and infectiousness: a systematic review and meta-analysis

服薬指導の根拠を海外文献から

新型コロナウイルスとインフルエンザ
・BMJ誌2020年12月15日
・Lancet Respir Med 2020年12月17日

BMJ誌2020年12月15日

Comparative evaluation of clinical manifestations and risk of death in patients admitted to hospital with covid-19 and seasonal influenza: cohort study
・米国退役軍人省の電子医療データベースを活用したコホート研究

・2020年2月1日〜6月17日にCOVID-19で入院した患者(3,641例)と2017〜2019年に季節性インフルエンザで入院した患者(12,676例)に関するデータを用いて、両者の臨床症状と死亡のリスクの違いを比較

・結果

医療資源の使用(人工呼吸器装着、ICU入室、入院期間)、死亡リスク
入院中の死亡(オッズ比[OR]:4.97、95%Cl:4.42〜5.58)
人工呼吸器の使用(オッズ比[OR]:4.01、95%Cl:3.53〜4.54)
ICU(オッズ比[OR]:2.41、95%Cl:2.25〜2.59)
入院日数の増加(オッズ比[OR]:3.00、95%Cl:2.20〜3.80)

※退役軍人が対象になるので、どうしても男性がほとんどになります

Lancet Respir Med 2020年12月17日

Comparison of the characteristics, morbidity, and mortality of COVID-19 and seasonal influenza: a nationwide, population-based retrospective cohort study
・フランスの全病院入退院情報を収録したデータベースPMSIを使用した後ろ向きコホート研究

・2020年3月1日〜4月30日に入院した全COVID-19患者89,530例と2018年12月1日〜19年2月28日に入院した全インフルエンザ患者45,819例を対象とし、危険因子、臨床的特徴および転帰を年齢層別に比較

・結果

COVID-19群においてインフルエンザ群と比較して多い項目
・侵襲的人工呼吸器使用率(9.7%vs.4.0%)
・集中治療室(ICU)在室率(16.3%vs.10.8%)
・ICU平均在室日数(15日vs.8日)
・入院中の死亡(16.9% vs. 5.8%)

※COVID-19の流行が2020年4月の第1週にピークに達し、3月17日までにフランスですでに普遍的なロックダウン措置が実施されたことを考えると、観察された入院者数が過小評価されている可能性があります。
さらに注目すべきことに、2018〜19年の期間は、過去5年間でフランスの季節性インフルエンザの致死率が最も高い期間でした。そのため、COVID-19の致死率が過小評価されている可能性もあります。

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