こんにちは。マサです。
糖尿病患者さんから
『治療を開始して血糖値が下がってきたけれど、まだ下げなければならないの?』、『このままではダメなの?』
と相談されることはありませんか?
私がその質問を受けた時にお話しすることを記事にしました。
先日ある患者さんから、「現在、HbA1c7.2%で目標とされているHbA1c6.9%まであと少しまで数値が下がった。新しいお薬を増やしてまでHbA1c6.9%に下げる必要があるの? 今の数値と目標値に大きな違いはないから、このままでも良いのでは?」と相談を受けました。その方は65歳の男性でした。
結論
できれば下げた方が良いです
目次
・合併症予防のためにはHbA1c7%未満がオススメ
・合併症について
・HbA1c7%未満をオススメする理由
・最後に私が薬剤師として患者さんに伝えていること
・目標血糖値について
現在の目標HbA1cは下記のように分かれています。(日本糖尿病学会HPより引用)
高齢者用
なぜこのように分類されているかというと、糖尿病の治療は『高血糖の改善』、『低血糖を生じずに治療すること』、『合併症を生じないこと』が目標になるからです。
高血糖の持続、低血糖の発症、合併症の発症が日常生活に支障をきたします。なので、低血糖を生じることなく、合併症のリスクを下げるために治療が必要です。
・合併症について
・合併症の種類
・合併症発症までの期間
合併症の種類
合併症は、細い血管に障害を起こして生じるものと、太い血管に障害を起こして生じるものに分かれます。
・細い血管に障害を生じる合併症には、目の網膜、腎臓、神経障害があります。
・太い血管に障害を生じる合併症には、脳梗塞や心筋梗塞などの動脈硬化があります。
合併症は、一度生じてしまうと十分に改善させることは難しくなります。
目の合併症のため、仕事や生活に支障を生じる。腎臓の合併症のため、1日おきに病院を受診し透析治療を受ける。脳梗塞の合併症にのため、半身麻痺になる。心筋梗塞の合併症のため、多くの薬の服用が必要になる。
『あの時しっかり治療をしていれば』と後悔しませんか?
合併症発症までの期間
合併症は糖尿病発症後、数年から数十年後に生じることが多いのですが、時々、合併症のような症状が出てから糖尿病の診断を受ける方もいます。
・なぜHbA1c7%未満をオススメするのか?
・なぜHbA1c7.2%ではダメで、HbA1c6.9%以下をオススメするのか
・どこまでHbA1cを下げた方が良いのか?
・『低血糖を生じないように、高めの血糖値が安心』と考えてしまう方へ
・余命が短いから、好きに食べ、好きに生きたいと考える高齢者へ
なぜHbA1c7.2%ではダメで、HbA1c6.9%以下をオススメするのか
確かに、HbA1c7.2%とHbA1c6.9%では大きな違いはないように思います。ただ経験上、『HbA1c7.2%でも良い』と考えている方のほとんどが、HbA1c6.9%以下を達成することがありません。むしろ、『HbA1c7.5%に上昇した時に、HbA1c7.2%と大差がないから大丈夫』と深刻に考えません。反対に、HbA1c6.9%以下の方はHbA1c7.2%に悪化すると、危機感をもってHbA1c7%未満に戻すように努力する方がほとんどです。
同じ商品が5,980円と6,000円で売られていた場合、5,980円が安く感じませんか? それが、6,000円と6,020円で売られていた場合、同じ20円の違いでも、ほとんど差を感じないのではないでしょうか? 治療においても同じように思います。
どこまでHbA1cを下げた方が良いのか?
「では、どこまで下げた方が良いの?」と疑問が生じます。
結論は、『低血糖を生じない範囲で下げられるだけ下げた方が良い』です。HbA1cが低ければ低いほど合併症を生じにくいと言われています。
さきほど、糖尿病の治療は『低血糖を生じずに治療すること』が目標とお話ししました。これは、何年か前に国際的に大きな試験があり、その結果から得られた答えでした。その試験とは、なるべく血糖値を下げるグループと適度に血糖値を下げるグループに分けて、どちらの死亡率が低いかを確認する試験でした。当初は、なるべく血糖値を下げるグループの死亡率が低くなると予想されていました。しかし、実際には死亡率が高くなりました。この原因は重症低血糖が多くあったためです。
『低血糖を生じないように、高めの血糖値が安心』と考えてしまう方へ
『低血糖を生じずに治療すること』とお話しすると、『低血糖を起こさないために高めの血糖値が安心』と考える方がいます。
最近のお薬は低血糖を起こしにくくなっています。血糖値を下げる薬よりも、上げない薬を使用することで、結果的に血糖値を下げています。薬を使用していなければ、低血糖を起こす心配はほぼありません。なので、まずは食事や運動注意にてできる限り血糖値を下げ、それでも下がらなければなるべく少ないお薬で治療します。低血糖を恐れるあまり、高血糖状態になるのは、結局合併症や死亡リスクを高めることになります。
適切な治療をして、これからの生活を明るくしませんか?
余命が短いから、好きに食べ、好きに生きたいと考える方へ
「余命が短いから好きに食べて好きに生きる」という高齢者がいらっしゃいます。その考えには共感します。ただ、人生の幕を閉じるまでに、目が不自由になる、足が痺れるなどの辛い思いをしてまでも好きに食べて好きに生きたいですか? そうであれば止めません。人生の幕が閉じるまで、なるべく辛い思いをせずに過ごせるよう、ある程度は注意することをオススメします。
・最後に私が薬剤師として患者さんに伝えていること
20代の方へ
まだまだ先の長い人生です。元気でいる時間を長くしましょう
30代・40代の方へ
人生も仕事もこれからの大きな活躍が期待されています。健康な時間を長くしましょう
50代の方へ
仕事の終わりが近づき、退職後にご自身の時間を楽しめるよう、健康に気を遣いましょう
60代の方へ
これからがご自身の時間です。健康への不安を抱かずに人生を送れるようにしましょう
70代以上の方へ
生活に支障が出ない、許される範囲で食事も生活も楽しみましょう