服薬指導

薬剤師の服薬指導『薬剤師の薬の説明が不要と考える患者さん』について


 

こんにちは。 マサです。

 

服薬指導をしたいのに聞いてもらえない。「説明は要らないから薬だけ欲しい」という患者さんに困ることはないですか?

その時の対応や気持ちについて私なりの考えをお伝えしたいと思います。

 

目次 

・日本の服薬指導の件数は多すぎる話

・『薬剤師法』や『薬剤服用歴管理指導加算』のために服薬指導をしていないか

・まったく話をしない方や話をしてくれない日があった方が、話をしてくれるようになった経験

・自分の精神を守るために

 

日本の服薬指導の件数は多すぎる話

このお話をする前に、私からどうしても伝えておきたいことがあります。

それは、私がポーランドへ海外研修に行って知ったことです。

ポーランドでの処方箋調剤において、薬剤師に服薬指導を求める患者さんの割合は50%程度という現実です。

日本のように薬剤師から説明にいくのではなく、患者さんから求められたら指導をします。

ポーランドでの薬剤師の地位は医師と同じかそれ以上です。その状況で服薬指導を求める患者さんが50%とすれば、日本の現状をどう考えますか?

 

海外研修にて知ったことは別のブログを書きますので、そちらをお読みください。

 

私が考える、『薬の説明は要らない』という患者さんにはいくつかのパターンがあると思います。まずはそこから考えたいです。

1.最初から薬剤師の話を聞く気のない方

2.急いでいて時間のない方

3.体調が悪いので早く帰りたい方

4.既に自分で知識のある方

5.身内や仲の良い方に、医療関係者のいる方

皆さんが困っている患者さんは1と4、5の患者さんと思います。そして特に1の患者さんではないでしょうか。

 

この1の患者さんも3つに分かれるように思います。もっとあるかもしれません。

a)最初からまったく話す気のない患者さん

b)今まで同じ説明しかされなかったので薬剤師の説明が必要ない、と考えるようになった患者さん

c)過去の服薬指導において、嫌な思いをしたことや、調剤間違いなどで信頼関係がなくなり、話を聞いてくれない患者さん

 

 

『薬剤師法』や『薬剤服用歴管理指導加算』のために服薬指導をしていないか

私たち薬剤師は、何のために服薬指導をしているのでしょうか? 多くの方が「患者さんのため」と回答すると思います。

ではなぜ、その患者さんが『話したくない』と言っているのに、話をしなければならないのですか?

薬剤師法による法的義務があるからではありませんか?

また、『薬剤服用歴管理指導加算』を算定するために患者さんとの会話を望む薬剤師はいませんか?

もちろん、患者さんが薬局に処方箋を提出したということは、患者さんにも薬剤師と話をする義務が発生していると思います。ただ、それを患者さんは知りません。そのことを伝えて服薬指導をすることもできるとは思いますが、何か違う気がしませんか?

 

私が考えるには、『最初からまったく話を聞く気がない方』はそれで良いと思います。患者さんに話してくれることを期待する方がおかしいと思います。

定期で服用している薬について、例えば血圧の薬であれば、

「立ちくらみはないですか? もし気になることがあれば教えてください。」

「目眩はないですか? もし気になることがあれば教えてください。」

「ふらつきはないですか? もし気になることがあれば教えてください。」

と確認をすれば良いと思います。

薬歴には、『「立ちくらみはないですか? もし気になることがあれば教えてください。」と指導も、返答なし。』と記録を残せば良いと思います。

 

この薬歴では『薬剤服用歴管理指導加算』は算定できません。ですが『法的義務』は満たしていると思います。

 

ただし、新しい薬が処方された時に、その薬を本当に使用して良いかどうかの確認は行うべきです。そこで話ができないのであれば、病院に「患者さんがまったく話をしてくれないので、今回の処方に間違いがないかだけ確認させてください。」と確認すれば良いと思います。それを患者さんが拒むのであれば、調剤拒否理由に当たると考えます。

 

『拒否して良いの?』と疑問になる方もいると思います。

 

例えば、運転免許更新の際に視力検査があります。「普段眼科を受診していて視力に問題がないから、視力検査をせずに免許更新をして欲しい」と言って、受け入れてもらえますか? 受け入れてもらえませんよね。それと同じです。もし相手の要望を受け入れて何かあれば、結局責任問題になります。

何事にもできることと、できないことがあります。

私たちは患者さんの『健康を願い行う服薬指導』と『自分の身を守るための服薬指導』をしなければならないと思います。

『自分の身を守るための服薬指導』が行われたら、それ以上を患者さんに望むのは薬剤師のエゴな気がします。

会社の方針や経営面を考慮すると、どうしても『薬剤服用歴管理指導加算』を算定したくなります。ですが、無理なものは無理です。

現実問題、これ以上を期待するのであれば、「私たち薬剤師は、患者さんの状態を確認してこのお薬をお渡しすることに問題がないと判断してからでないとお薬をお渡しできません。その確認を断るのであれば、毎回処方する医師に処方箋に間違いがないか確認しなければならなくなります。また、患者さんが薬局に処方箋を提出したといことは、患者さんにも薬局の話を聞く義務が発生しています。」と伝えて話をするしかないと思います。

この考えには賛否両論があると思います。

何としても『薬剤服用歴管理指導加算』を算定するのであれば、患者さんにお願いをして話をしてもらうしかないと思います。

納得できなくて構いません。私の考えだと理解してください。

 

 

まったく話をしない患者さんや話をしてくれない日があった患者さんが、話をしてくれるようになった経験

『今まで同じ説明しかされなかったので薬剤師の説明が必要ない、と考えるようになった患者さん』や『過去の服薬指導において、嫌な思いをしたことや、調剤間違いなどで信頼関係がなくなり、話を聞いてくれない患者さん』については、薬剤師の責任です。ただ、こちらが何か不快な思いをさせたかどうか、はわからないことが多いです。

ですが、それを確かめたことで話をしてくれるようになったケースが何度もあります。

 

例えば、「処方箋通り薬をくれれば良い」と言っていた患者さんに対して、『薬剤服用歴管理指導加算』の算定を意識せずに、患者さんのことを心配することだけに集中しました。そこで、「何かイライラされているように思いますが大丈夫ですか?」と話しかけたところ、病院であったことを話してくれました。その患者さんは、医師が話をしてくれることや指導してくれることが正しいとわかっている。でも、感情がそれを受け入れられない。なので、反発したくなる。反発するとさらに医師から指導をされるのでイライラしてしまう。毎回その繰り返し。特に今日はイライラした。」と話してくれました。

その時に、病院でイライラしてから薬局に来て、薬局でも健康について質問や指導をされたくない、と考えるのも無理はないと思いました。

私は、そんなにイライラしてしまうならば、病院受診を止めてしまってもおかしくないのに、きちんと毎月病院受診をしていることは素晴らしいと思いました。そのため、「イライラしても病院を受診しているのは素晴らしいですね。ちゃんとご自身の体を心配していますね。」とお伝えしたところ、患者さんがこちらを受け入れてくださり、その後は話ができるようになりました。

 

他にも、日によって話をしてくれたり、話をしてくれなかったりする患者さんがいました。ある日その方から「何で薬剤師は色々と聞こうとするの? 頑張って努力したのに検査をして良い結果が出なくて落ち込んでいるのに、そこでまた何か言われるのは嫌」と話がありました。その時は何も言えなかったのですが、翌月来局された時に、「少しでも何かお役に立てることがあればと思って伺っていました。ですが、そうでない方が良いのであれば、止めますがどうしますか?」と伺いました。

その後の反応がどうだったか覚えていませんが、それからは以前よりも話をしてくださったり、患者さんから質問をしてくださったりするようになりました。まずは患者さんがどんな様子かを伺い、『今日は検査結果の話を控えよう』や、『デリケートな話を控えよう』と、態度を改めました。

結局、なぜそのような態度を取るかの理由確認と、患者さんを理解することから始めることが大切なのだと思います。

 

 

自分の精神を守るために

本来ならばすべての患者さんに同じ対応をするのが薬剤師です。ですが、私たち薬剤師も人間です。人間関係の相性があります。アプローチできる患者さんから始め、薬剤師として人間として成長したら、今までアプローチできなかった患者さんへのアプローチを開始すれば良いと思います。最初から全ての患者さんにアプローチすると、自分の精神が壊れてしまい、薬剤師を辞めたくなってしまう気がします。恥ずかしながら、私はすべての患者さんに同じ対応ができていません。

少しずつで構いません。一歩一歩、一緒に進んで行きましょう。

 

 

 

 

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