お薬について

薬剤師が評価する『リベルサス』:初の経口GLP-1受容体作動薬


こんにちは。 マサです。

2021年1月に発売が予定されています『リベルサス』について記事にしたいと思います。

従来のGLP-1製剤は注射剤しかなく、今回は初めて経口剤として発売されます。

私としてはHbA1c低下と体重減少の効果から期待している薬剤です。その理由を書いていきます。

結論

・ジャヌビア・グラクティブ100mgとの比較から、リベルサス錠7mg or 14mgはDPP-4阻害薬よりも優れたHbA1c低下作用を期待できます
・ビクトーザ皮下注1.8mgとトルリシティ0.75mgとの比較から、経口剤であっても注射剤のGLP-1製剤と同程度の効果を期待できます
・副作用においては、GLP-1製剤特有の胃腸障害が多く発生し、その頻度はDPP-4阻害薬よりも高頻度です。しかし、GLP-1の経口・注射製剤間での胃腸障害の発生率に差はないように思います

今後の課題

・リベルサスは胃で吸収されるように設計されており、吸湿性の高い薬剤になっています。そのため、一包化ができないことや食事の影響を受けること、シートを真ん中で切ることができないために残薬調節がしにくいです
・GLP-1製剤特有の胃腸症状によって、服用できない患者さんが多くいることが予想されます。特に痩せている高齢者には要注意です

心血管リスクの患者さんに対して

アメリカの糖尿病学会のガイドラインでは、メトホルミン製剤の次にGLP-1受容体作動薬もしくはSGLT-2阻害薬のどちらかを使用するように推奨しています。欧州心臓病学会と糖尿病学会による心血管疾患の診療ガイドラインでは、第一選択がGLP-1受容体作動薬もしくはSGLT-2阻害薬になっています。
今まではGLP-1受容体作動薬が注射剤しかなかったため、その金額と手技からどうしても内服薬であるSGLT-2阻害薬を選択しやすかったです。しかし、今回の『リベルサス錠』の発売によってGLP-1受容体作動薬が使用しやすくなったと思います。これはとても大きなことです。
そうなると「GLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬のどちらを先に選択するか」という問題が生じます。それは別の記事で紹介します。

【更新】SGLT-2阻害薬とGLP-1受容体作動薬はどちらを先に選択する?

こんにちは。 マサです。 心血管系リスクのある患者さんへの薬物治療における アメリカ糖尿病学会のガイドラインでは、『メトホルミン製剤の次にGLP-1受容体作動薬もしくはSGLT-2阻害薬のどちらかを使 ...

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『リベルサス』における文献はPIONEER1〜10まであります。

PIONEER試験のまとめ

・メトホルミン服用中の患者において、経口セマグルチド14mgはエンパグリフロジン25mgと比較して、HbA1c低下作用が強く、胃腸症状も多く発現する(PIONEER2)

・リベルサス7mgはジャヌビア・グラクティブ100mgよりもHbA1c低下作用と体重低下作用が優れている(PIONEER3)

・リベルサス14mgはビクトーザ皮下注1.8mgと同程度のHbA1c低下作用があり、体重低下作用はビクトーザ皮下注1.8mgよりも優れている(PIONEER4)

・リベルサス7mgとリラグルチド皮下注0.9mgを比較し、リベルサス7mgはビクトーザ皮下注0.9mgとほぼ同様のHbA1c降下作用を示し、14mgはビクトーザ皮下注0.9mgよりもHbA1c降下作用が強かった(有意差なし)。リベルサス14mgはビクトーザ皮下注0.9mgよりも有意に体重を減少させた(PIONEER9)

・リベルサス7mgとトルリシティ皮下注0.75mgのHbA1cの低下作用は同じであり、体重減少においてもリベルサス7mgとトルリシティ皮下注0.75mgがほぼ同じであった(PIONEER10)

PIONEER1

目的
食事・運動療法のみの2型糖尿病患者において、GLP-1受容体作動薬セマグルチド単独療法の有効性と安全性をプラセボと比較

結果
・用量依存的に血糖降下作用を示す。
・3mg群のHbA1c:-0.6%、7mg群のHbA1c:-0.9%、14mg群のHbA1c:-1.1%
・3mg群、7mg群、14mg群において、体重現象においては14mg群において有意差が示された
・治療薬中止はsemaglutide 3mg群1.7%,7mg群2.3%,14mg群7.4%,プラセボ群2.2%であった

結論
食事・運動療法のみの2型糖尿病患者において、経口セマグルチドは用量依存的に血糖降下作用を示す

PIONEER2

目的
メトホルミン(≧1,500 mg)投与下でコントロール不良の2型糖尿病患者において,経口GLP-1受容体作動薬セマグルチド14mgの有効性と安全性をSGLT2阻害薬エンパグリフロジン25mgと比較した
・一次エンドポイントはベースラインから26週後までのHbA1cの変化
・二次エンドポイントはベースラインから26週後までの体重の変化
・metformin(≧1,500 mg)投与下の成人2型糖尿病患者822例。

結果
・経口セマグルチド群でエンパグリフロジン群にくらべ,有意にHbA1cが低下した( -1.3% vs. -0.9%,推定治療差[ETD] -0.4%[95%CI –0.6 to -0.3],p<0.0001)
・26週後の体重については,経口セマグルチドの優越性は認められなかった
・消化管の有害事象は,経口セマグルチド群で多くみられた(嘔気:21例 vs. 2例,嘔吐:11例 vs. 1例)

結論
メトホルミン服用中の患者において、経口セマグルチド14mgはエンパグリフロジン25mgと比較して、HbA1c低下作用が強く、胃腸症状も多く発現する

PIONEER3

目的
メトホルミン単剤投与下またはスルホニル尿素薬併用の2型糖尿病患者において,GLP-1受容体作動薬セマグルチドを追加で経口投与した場合の有効性および長期有害イベントのプロフィールをシタグリプチン100mg経口投与と比較
・一次エンドポイントはベースラインから26週後までのHbA1cの変化
・二次エンドポイントはベースラインから26週後までのBMIの変化など

結果
・HbA1cの変化について,シタグリプチン100mg群にくらべ,セマグルチド7mg群(群間差-0.3%[95%CI -0.4 to -0.1],p<0.001),14mg群(-0.5%[-0.6 to -0.4],p<0.001)で有意に減少した。一方,セマグルチド3mg群のシタグリプチン100mg群に対する非劣勢は示されなかった(非劣勢マージン0.3%)
・体重の変化についても,シタグリプチン100mg群にくらべ,セマグルチド7mg群(群間差-1.6 kg[95%CI -2.0 to -1.1],p<0.001),14mg群(-2.5 kg[-3.0 to -2.0],p<0.001)で有意に減少した

結論
メトホルミン服用中もしくはメトホルミンとSU薬服用者に経口セマグルチド7mgと14mgは、シタグリプチン100mgよりもHbA1c低下作用が強く、体重減少作用も強い

PIONEER4

目的
経口セマグルチド14mgとリラグルチド皮下注(ビクトーザ1.8mg)、プラセボとの比較試験
一次エンドポイントはベースラインから26週後までのHbA1cの変化
二次エンドポイントはベースラインから26週後までの体重の変化

結果
・経口セマグルチド群のHbA1c:-1.2%、体重:-4.4kg
・リラグルチド群のHbA1c:1.1%、体重:-3.1kg
・プラセボ群のHbA1c:0.2%、体重:-0.5kg

結論
経口セマグルチド14mgはリラグルチド皮下注1.8mgと同程度のHbA1c低下作用を示し、体重減少においてはリラグルチド皮下注1.8mgよりも有意差を持って優れている

PIONEER5

目的
中等度腎障害を伴う2型糖尿病患者において,経口セマグルチドの有効性と安全性をプラセボと比較した
・一次エンドポイントはベースラインから26週後までのHbA1cの変化
・二次エンドポイントはベースラインから26週後までの体重の変化

結果
・経口セマグルチド群-1.0%(SE 0.1,-11 mmol/mol[SE 0.8]),プラセボ群-0.2%(SE 0.1,-2 mmol/mol[SE 0.8])であり,経口セマグルチドのプラセボに対する優越性が認められた(推定治療差-0.8%,95%CI -1.0 to -0.6,p<0.0001)
・有害事象は,軽度~中等度の消化管イベント(おもに嘔気)で,経口セマグルチド群でプラセボ群に比べて多かった(31例[19%] vs. 12例[7%])。

結論
経口セマグルチドは推算eGFR≧30mL/1.73m2での有効性と安全性が示された

PIONEER6

目的
心血管リスクの高い2型糖尿病患者において,経口セマグルチドの心血管リスクのプロファイルを検証した
主要評価項目は主要有害心血管イベント(MACE)(心血管死,非致死性心筋梗塞,または非致死性脳卒中の複合)

結果
・MACE(心血管死,非致死性心筋梗塞,または非致死性脳卒中の複合)の発生は経口セマグルチド群61例(3.8%),プラセボ群76例(4.8%)で,経口セマグルチドのプラセボに対する非劣性が認められた(HR 0.79,95%CI 0.57-1.11,非劣性のp<0.0001,優越性のp=0.17)
・経口セマグルチド群でプラセボ群にくらべ,心血管死は有意に減少したが(15例[0.9%] vs. 30例[1.9%],HR 0.49,95%CI 0.27-0.92),初発の非致死性心筋梗塞(37例[2.3%] vs. 31例[1.9%],HR 1.18,95%CI 0.73-1.90)と非致死性脳卒中(12例[0.8%] vs. 16例[1.0%],HR 0.74,95%CI 0.35-1.57)については有意な群間差は認められなかった。
また,全死亡は経口セマグルチド群で有意に減少した(23例[1.4%] vs. 45例[2.8%],HR 0.51,95%CI 0.31-0.84)
その他の有効性評価項目であるベースラインから試験終了までのHbA1cの平均変化は,経口semaglutide群-1.0%,プラセボ群-0.3%,体重の平均変化は-4.2 kg,-0.8 kgであった
・有害事象による治療中止は,経口セマグルチド群でプラセボ群に比べて有意に多かった(184例[11.6%] vs. 104例[6.5%]),主に消化管の有害事象(108例[6.8%] vs. 26例[1.6%])によるものであった

結論
経口セマグルチドの心血管リスクはプラセボに対して非劣性

PIONEER7

目的
コントロール不良の2型糖尿病患者において,適宜用量調整による経口GLP-1受容体作動薬セマグルチド 1日1回の有効性と安全性を,固定用量の経口DPP-4阻害薬シタグリプチン100 mg 1日1回と比較した
・一次エンドポイントは52週後におけるHbA1c<7%の達成率
・二次エンドポイントはベースラインから52週後までの体重変化
・経口セマグルチドは,3 mgより開始し,8週ごとにHbA1cの値および消化管の認容性(嘔気または嘔吐)を評価し,3 mg,7 mg,または14 mgへと,適宜用量を調整するものとした(各評価時にHbA1c<7%の場合は,用量はそのまま維持し,HbA1c≧7%で,中等度/重度の嘔気または嘔吐の報告が3日以上ない場合はひとつ上の用量に変更)。経口sitagliptinは固定用量100 mgを1日1回投与

結果
・HbA1c<7%の達成率は,セマグルチド群でシタグリプチン群に比べ,有意に高かった(58%[134/230例] vs. 25%[60/238例])。
・HbA1c<7%達成のオッズ比(OR)は,セマグルチド群でシタグリプチン群に比べ,有意に良好であった(OR 4.40,95%CI 2.89 to 6.70,p<0.0001)
・体重の変化は,経口セマグルチド群でシタグリプチン群に比べ,有意に減少した( -2.6 kg[SE 0.3] vs. -0.7 kg[SE 0.2],推定治療差[ETD] -1.9 kg,95%CI -2.6 to -1.2,p<0.0001)
・有害事象の発生は,経口セマグルチド群78%(197/253例),シタグリプチン群69%(172/250例)であり,経口セマグルチド群では嘔気がもっとも多い有害事象であった(21%[53例])

結論
経口セマグルチドを嘔気と嘔吐が許すならば8週毎、3mgから最大14mgに増量し、経口シタグリプチン100mgと比較した結果、経口セマグルチド群においてHbA1c7%未満達成者数が2倍以上多く、体重は2kg程度多く減少した。胃腸の副作用については、経口セマグルチド群が10%多かった(さまざまな血糖降下薬を服用中)

PIONEER8

目的
メトホルミンの有無にかかわらずインスリン投与下でコントロール不良の2型糖尿病患者において,経口セマグルチドの有効性,安全性および忍容性を検討した
・一次エンドポイントはベースラインから26週後までのHbA1cの変化
・二次エンドポイントはベースラインから26週後までの体重の変化

結果
・セマグルチド群でプラセボ群に対し,HbA1c低下における優越性が認められた(推定治療差[ETD]:3 mg群-0.5%[95%CI -0.7 to -0.3],7 mg群-0.9%[-1.1 to -0.7],14 mg群-1.2%[-1.4 to -1.0],いずれもp<0.0001)
・同じく体重減少においても,セマグルチド群でプラセボ群に対し,優越性が認められた(3mg:-0.9 kg[95%CI -1.8 to -0.0,p=0.0392],7mg:-2.0 kg[-3.0 to -1.0,p=0.0001],14mg:-3.3 kg[-4.2 to -2.3,p<0.0001])
・セマグルチド群でもっとも多くみられた有害イベントは,吐き気(3 mg群11.4%,7 mg 16.6%,14 mg群23.2%,プラセボ群7.1%)で,いずれも軽度~中等度のものであった

結論
インスリン投与中の2型糖尿病患者への、経口セマグルチドのプラセボ比較での有効性と安全性が確認された

PIONEER9

目的
食事・運動療法のみの日本人2型糖尿病患者において,経口セマグルチドの用量反応関係を検討し,さらに経口セマグルチドの有効性と安全性をプラセボおよびGLP-1受容体作動薬皮下注射と比較した
・一次エンドポイントはベースラインから26週後までのHbA1cの変化
・全例をセマグルチド3mg群(49例),セマグルチド7mg群(49例),セマグルチド14mg群(48例),プラセボ群(49例), リラグルチド0.9mg群(48例)に1:1:1:1:1にランダム化

結果
・ベースラインから26週後までのHbA1cの変化において,経口セマグルチドの用量依存性が示された(平均変化:3mg群-1.1%[SE 0.1],7mg群-1.5%[0.1],14mg群-1.7%[0.1],プラセボ群-0.1%[0.1],リラグルチド群-1.4%[0.1])
・ベースラインから26週後までの体重変化は,14mg群でプラセボ群およびリラグルチド群にくらべて有意な減少を認め(p=0.0073,p<0.0001),その減少は52週後まで持続した(p=0.0019,p<0.0001)
・セマグルチド群で多くみられた有害イベントは軽度/中等度の消化管イベントであり,そのうちもっとも多かったのが便秘であった(セマグルチド群10~13%,プラセボ群6%,リラグルチド群19%)

結論
日本人における経口セマグルチド3mg、7mg、14mgとプラセボ、リラグルチド皮下注0.9mgを比較し、経口セマグルチドの7mgはリラグルチド皮下注0.9mgとほぼ同様のHbA1c降下作用を示し、14mgはリラグルチド皮下注0.9mgよりもHbA1c降下作用が強かった(有意差なし)。経口セマグルチド14mgはリラグルチド皮下注0.9mgよりも有意に体重を減少させた

PIONEER10

目的
日本人2型糖尿病患者において,経口セマグルチドの安全性と有効性をデュラグルチド皮下注射と比較した。
・一次エンドポイントは57週間における治療に関連する有害イベント発生数。
・二次エンドポイントは52週後のHbA1cおよび体重の変化。

結果
・有害事象の発生は,セマグルチド 3mg群101例(77%),7mg群106例(80%),14mg群111例(85%),デュラグルチド群53例(82%)であった。
もっとも多い事象は感染症と消化管イベントであり,消化管イベントのほとんどが軽度かつ一過性の便秘と吐き気であり,セマグルチド群では用量依存的に発生した。
有害事象による治療中止はセマグルチド3 mg群4例(3%),7 mg群8例(6%),14mg群8例(6%),デュラグルチド群2例(3%)であった。死亡/重症低血糖イベントはなかった
・HbA1cのベースラインから52週後までの変化は,セマグルチド3mg群では-0.9%(SE 0.1),7mg群では-1.4%(0.1),14 mg群では-1.7%(0.1),デュラグルチド群では-1.4%(0.1)であった(セマグルチド 14 mg群 vs. デュラグルチド群の推定治療差:-0.3%[95%CI-0.6 to -0.1],p=0.0170)
・体重のベースラインから52週後までの変化は,セマグルチド3mg群では0.0 kg(SE 0.3),7mg群-0.9 kg(0.3),14mg群では-1.6 kg(0.3),デュラグルチド群では1.0 kg(0.4)であった(セマグルチド14mg群 vs. デュラグルチド群の推定治療差:-2.6 kg[95%CI -3.5 to -1.6],p<0.0001)

結論
HbA1cの低下はセマグルチド7mgとトルリシティ0.75mgが同じであり、体重減少においてもセマグルチド7mgとトルリシティ0.75mgがほぼ同じであった。
 
リベルサス錠の服薬指導は下記の記事をご覧ください

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