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薬剤師が実施する『薬剤使用期間中の患者フォローアップ』は難しくない!!


 

こんにちは。マサです。

 

2020年9月から患者フォローが義務化されますが、具体的にどのように実施していくのかイメージが湧いていますか?

まだイメージができていない方に向けて記事を書きました。

あくまで、私個人の考えになります。他の考えがある方は、そちらに従ってください。

また、今後薬剤師会やそれ以外から情報の更新があると思います。新しい情報があればそちらを参考にしてください。

 

「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き(第 1.0 版)」 の策定について、にも記載がありますように、既に実施していることを新たに薬剤師法に明記しただけのように思います。特別なことと捉える必要はないと思います。

 

目次 

1.薬剤師が実施する『薬剤使用期間中の患者フォローアップ』は難しくない!!

2.想定される患者さん例

3.患者さんから求められて行う患者フォローアップもある

4.記録は調剤録と薬剤服用歴管理記録(通称:薬歴)

5.処方箋により調剤された医薬品だけでなく、市販薬も患者フォローアップの対象

6.患者フォローアップを推進するには、患者さんの背景を知っている必要がある

 

 

薬剤師が実施する『薬剤使用期間中の患者フォローアップ』は難しくない!! 結論:『服薬指導の際に薬剤師が『不安や心配』に思った患者さん』が対象

患者フォローアップの対象者は、今回の法改正条文で「調剤した薬剤の適正な使用のため必要があると認める場合には」と記載されています。

これは、対象者は薬剤師が選択する、ということになります。

 

どんな患者さんを選択すれば良いのか悩む方もいると思います。

「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き(第1.0版)」には、

「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き(第1.0版)」には、標準的な患者フォローアップの方法を示していますが、それを貫く基本的な考えは、

①患者個々の特性

②罹患している疾病の特性

③当該使用薬剤の特性

に合わせて、適切に患者フォローアップを行うことである。

と記載されています。

要するに、服薬指導の際に薬剤師が『不安や心配』に思った患者さんに対して行います。

 

また、「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き(第1.0版)」には【検討する上での要素】にも言及しています。それらを考慮します。

【検討する上での要素】


・使用薬(ハイリスク薬 他)

・併用薬(要指導医薬品、一般用医薬品、医薬部外品を含む)


・積極的に摂取している食品や嗜好品(健康食品、酒·タバコ 他)


・アレルギー歴(医薬品、食品 他)、副作用歴


・疾患(原疾患、既往歴、合併症及び他科受診で加療中の疾患を含む)

・臨床検査値(腎機能、肝機能 他)


・薬剤等の使用状況(残薬の状況を含む)


・薬剤使用中の体調の変化

・年齢・性別


・身⻑・体重


・妊娠・授乳状況(女性)


・職業


・生活の特性


・患者特性(薬識·認識力、生活機能 他) 等

と示されています。

 

 

想定される患者さん例

例1)新しく血圧の薬が追加になった患者さん

A)血圧がとても高い状態で処方された場合

・服用後の血圧はいくつまで下がりましたか?

・(薬開始時に頭痛や動悸などの症状があった場合は)血圧はいくつまで下がりましたか? 頭痛や動悸の症状は改善しましたか?

B)自宅での血圧測定をしない患者さんであり、白衣高血圧の疑いがある場合

立ち上がる時や頭を動かした時、お風呂から出た後、運動後にふらついたり、ぼーっとしたりすることはないですか?

C)既に使用したことのあるお薬だけれど、使用した時に低血圧を起こしたのでお薬を休薬した経験がある。その患者さんの血圧が不安定なので、再度処方された場合

以前起こしたことのあるような低血圧症状が出たかどうかを確認

D)早朝高血圧を改善するために就寝前服用の指示があるけれど、自分勝手に飲み方を変えることや、就寝前服用を忘れやすい患者さんである場合

用法通りに服用できていますか?(できていなければその理由と対処方法)

E)既に同系統の血圧の薬を服用しているけれど、今回のお薬がどうしても必要なので同系統でも処方された場合

(Ca拮抗薬2剤)低血圧になってしまうことや、服用した後に動悸を生じること、脈が遅くなったり乱れたりすることは?

F)お薬が追加になったことを本当に理解しているかどうかに不安がある場合

処方されたお薬を服用していますか? 1日何回服用していますか? いつ服用していますか?

G)他薬で日光過敏の副作用歴のある患者さんに対して、サイアザイド系が処方された場合

お薬を開始してから、肌が日光を浴びると痒くなったり赤く腫れたり、ただれたりすることはないですか?

 

例2)あるスタチン薬を使用していてCPKが上昇したので、一度スタチンを休薬したことがある患者さんに、別のスタチンが処方された患者さん

こむら返りや血尿、手足体の痛みや痺れはないですか?

 

例3)抗コリン作用のある薬が処方された患者さん

A)前立腺肥大による尿閉疑いのある患者さんに処方された場合

尿の出が悪くなっていませんか?

B)緑内障の手術前、眼圧が不安定の患者さんに処方された場合

目の痛みや霞、ピントが合わないなどの症状はありませんか?

C)脈が不安定な患者さんに処方された場合

動悸や息苦しさ、胸の違和感、脈の乱れなどありませんか?

D)高齢者で足元に不安がある患者さんに処方された場合

頭がぼーっとしてふらつくことはありませんか?

E)便秘体質の患者さんに処方された場合

便の出が悪くなっていませんか?

 

例4)ハイリスク薬であるSU薬が処方された患者さん

A)食事時間が不規則で、低血糖を起こす恐れのある場合

食事前に気持ち悪くなることや力が入らなくなること、冷や汗などの症状はないですか?

B)食事時間は規則的だけれど、欠食することのある場合

欠食した時に気持ち悪くなることや力が入らなくなること、冷や汗などの症状はないですか?

C)飲酒量が多いことで、低血糖のリスクが高い場合

・飲酒をした後に気持ち悪くなることや力が入らなくなること、冷や汗などの症状はないですか?

・夜中に大量の汗をかいて起きたり、気持ち悪くなって起きたりすることはありませんか?

朝起きた時に頭痛やだるさ、気持ち悪さの症状はないですか?

D)肝機能や腎機能が悪いため、低血糖のリスクが高い場合

気持ち悪くなることや力が入らなくなること、冷や汗などの症状はないですか?

E)下痢体質の患者さんである場合

気持ち悪くなることや力が入らなくなること、冷や汗などの症状はないですか?

 

例5)理解力に乏しい患者さん

A)今まで1日2回しか服用していなかったけれど、1日3回服用になることに対応できるか不安な場合

指示された通りに1日3回のめていますか?

B)食前服用や食後服用が必要な薬だけれど、それを理解できそうもない場合

指示された通りに食前と食後にのめていますか?

C)残薬がばらついており、他の薬と間違って服用することや過剰服用、服用忘れが心配な場合

今回変わったお薬をどのようにのんでいますか?

D)目薬、点鼻薬、吸入薬などの使用において、正しく使用できるか不安のある場合

それぞれの使い方を確認

 

例6)下剤や利尿剤が処方された患者さん

A)熱中症を生じやすい炎天下での作業やビニールハウスでの仕事をしている場合

気持ち悪さ、頭痛、脱力感などの症状はありませんか?

B)便秘が改善されても不必要に下剤を使用してしまいそうな場合

下痢になるまでお薬を使用していませんか?

C)ふらつきの心配のある患者さんに利尿薬が処方された場合

お薬を服用してから4、5時間の間に、ふらつくことはありませんか?

D)日頃から水分補給に不安がある場合

お薬をのんでもトイレに行かないことや、おしっこが出ても濃い黄色の尿であることはありませんか?

 

例7)睡眠薬が処方された患者さん

A)たくさんお酒を飲む方への処方だった場合

朝起きた時にひどくだるいことや、夜中起きた時の記憶がないこと、夜中起きた時に力が入らないことはありませんか?

B)夜中に何度も中途覚醒する高齢者だった場合

夜中のトイレの時に、ふらついて転びそうになることはありませんか?

C)お薬を服用しても、すぐに布団に入ってくれるか心配な場合

お薬を服用したらすぐに布団に入っていますか?

 

 

患者さんから求められて行う患者フォローアップもある

患者フォローアップは薬剤師から患者さんの一方向だけでなく、患者さんからの求めに応じて実施することもあると思います。

例えば薬剤交付から次回来局までの間に

状態が変わったから受診した方が良い?と相談された場合

・市販薬を服用して良いか相談を受けた場合

・急遽検査をすることになったけれど、お薬を服用して検査を受けた方が良いの?と相談された場合

・健康診断の結果が出たから確認して欲しい、と相談された場合

・他で薬をもらったけれど、飲み合わせの確認をしてもらい忘れたから確認して欲しい、と相談された場合

など、薬剤師が必要であると考えた時に実施することになると思います。

 

 

記録は調剤録と薬剤服用歴管理記録(通称:薬歴)

「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き(第1.0版)」には

(7)記録

 患者に確認した事項、薬剤師が分析‧評価した結果と対応(患者への情報提供·指導)等については、調剤録に記載する。(薬剤師法第 28 条第 2 項)。 記載にあたっては、的確かつ経時的に整然と記録することは必須である。

中略

必ずしも SOAP 形式にこだわることなく、記録しておくべき要点が何かを意識すること

中略

「簡潔に要点を記録する」「記録する内容にメリハリをつけて重要な事項を浮き彫りにする」 という工夫をした記録にすべきである。

とありますので、要点を調剤録に記録することになります。

ただ、患者さんを継続的にフォローアップしていくことの観点からすれば、次回来局時に患者フォローアップを実施した内容を把握して服薬指導をする必要があります。

そのため、調剤録だけでなく薬剤服用歴管理記録(通称:薬歴)にも記録しておくことが必要になると思います。

2020年9月3日更新2020年8月31日付で、厚生労働省より
『医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等 の一部を改正する法律の一部の施行に当たっての留意事項について』
が示されました。
薬剤服用歴等であっても、必要事項が記載されていれば当該規定を満たすものであること」と記載されています

 

調剤録への記録例として

□月□日 ×時××分 電話にて患者フォローアップ

SU薬追加により、欠食時や食事間隔が延長した場合に、冷や汗や震えの低血糖症状が現れていることが判明。処方医に連絡。

処方医より2錠分2→1錠分1に変更と指示あり。

 

薬剤服用歴管理指導記録への記載例として

・同上の場合(変更があった場合)

・医師への確認がなかった場合(調剤録への記載は不要に思います)→解釈が変わるようならば今後訂正します

○月○日 △時△△分 電話にて患者フォローアップ

SU薬追加による、冷や汗や震えの低血糖症状なし。継続服用で良いと判断。

2020年9月3日更新

薬剤服用歴への記載例として

◇月◇日 ◆時◆◆分 電話にて患者フォローアップ

フォローアップ理由:処方変更により低血糖が心配なため

結果:SU薬追加による、冷や汗や震えの低血糖症状なし。継続服用で良いと判断。

 

処方箋により調剤された医薬品だけでなく、市販薬も患者フォローアップの対象

「薬剤使用期間中の患者フォローアップの手引き(第1.0版)」には

薬局で、処方箋医薬品以外の医療用医薬品、薬局製造販売医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品を販売する場合、販売後フォローアップについての基本的な考え方は、処方箋に基づく調剤の場合と同様と考えられる。すなわち、使用者の背景情報や医薬品・併用薬等から、薬学的知見に基づき総合的に販売後フォローアップを判断することになる。

と記載されています。

 

患者フォローアップを推進するには、患者さんの背景を知っている必要がある

患者さんが1日何回食事をしているのか、交代勤務があるのか、飲酒頻度はどれくらいなのか、どうやって薬を管理しているのか、薬は自己管理なのか等、知っていなければ患者フォローアップをするべきかどうかの判断ができない場合があると思います。日頃から確認することを意識して服薬指導をする必要があると思います。

 

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