お薬について

薬剤師のための『骨粗鬆症治療薬のまとめ①』 個人的見解を添えて!!


こんにちは。 マサです。

調剤薬局にて薬剤師として働いています。

先日患者さんから骨粗鬆症治療薬について質問を受けました。


65歳女性 佐藤さん

おばあちゃん
友人は週1回のお薬なのに、なぜ私は毎日のむ薬(ラロキシフェン)を服用しているの?

マサ
腰椎の骨密度、大腿骨の骨密度の状態によって選択する薬が変わります。また、主治医の意図もあります。
佐藤さんの場合は、大腿骨骨密度はさほど低下しておりませんが、腰椎骨密度が低下しています。
腰椎骨密度を高める作用としては、週1回製剤でなくても現在の薬で効果が期待できます。また、何年も継続服用していくことを考えると、今の薬の方が体にあっていると思います。今後の検査結果では変更になるかもしれません。

恥ずかしながら今までガイドラインをじっくり読むことがありませんでしたので、
今回は『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』を参考に、骨粗鬆症治療薬についてまとめました。

カルシウム薬

特徴
・カルシウム摂取不足が骨粗鬆症の病態に影響を与えている場合(胃腸管切除、乳糖不耐症、極度の少食、神経性食欲不振症など)や、続発性副甲状腺機能亢進症を伴っている場合には、効果が期待できる。
・活性型ビタミンD3薬と併用されている場合には高カルシウム血症を発症する可能性があるため、血清カルシウム/尿中カルシウム比0.3〜0.4以上が高カルシウム尿症の目安として注意が必要である。 

評価
骨密度:わずかではあるが上昇するとの報告がある(B)
椎体骨折:抑制するとの報告がある(B)
非椎体骨折:抑制するとの報告がある(B)
大腿骨近位部骨折:抑制するとの報告はない(C)

個人的見解
単独で使用して骨密度を上昇させたり、骨折抑制を期待したりするのではなく、活性型ビタミンD3製剤と併用して使用することで、薬としての価値が高まる様に思います。

女性ホルモン薬

特徴
・Women’s Health Initiative(WHI)試験において、結合型エストロゲンと酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)の投与は、心血管障害、脳卒中、血栓症および乳がんのリスクを増加させたとの成績を示したが、その後の検討で、WHIで見られた有害事象は、エストロゲンの種類、投与量、投与方法、投与経路、投与開始時期(年齢)、投与期間などを考慮することで軽減できることが明らかとなった。
・乳がんは、エストロゲン単独投与ではリスクの増加はないこと、黄体ホルモンとの併用でも5年未満の使用ではリスクの増加はなく、かつその中止によってリスクは消失することが示されている。
・エストロゲンの骨折抑制効果はエストロゲン効果の弱いエストリオールを除いて共通効果と考えることが妥当と思われる。
・エストロゲンの骨折抑制効果は経口剤と経皮剤で差のないことが多数例の症例対照試験で観察されている。 

評価
・結合型エストロゲン(日本では骨粗鬆症は適応外)
骨密度:上昇効果がある(A)
椎体骨折:抑制する(A)
非椎体骨折:抑制する(A)
大腿骨近位部骨折:抑制する(A)
・エストラジオール
骨密度:上昇効果がある(A)
椎体骨折:抑制する(A)
非椎体骨折:抑制する(A)
大腿骨近位部骨折:抑制する(C)超低用量の貼付剤は、ラロキシフェンと同等の骨密度上昇効果を持つことが無作為盲検比較試験で示されている。

個人的見解
骨密度を上昇させ、骨折リスクを低下させる効果が期待できます。
SERMと違い、非椎体骨折の評価がAです(SERMはB)。
注意点は、禁忌項目に「エストロゲン依存性悪性腫瘍」、「未治療の子宮内膜症のある患者」、「重篤な肝障害のある患者」、「診断の確定していない異常性器出血のある患者」があります。
これらの禁忌項目はSERMにはありません。
安全性や使いやすさを考えるとSERMを選択することになると思います。

ラロキシフェン(先発品:エビスタ):SERM

特徴
・本剤は、エストロゲンとほぼ同等の親和性でエストロゲン受容体と結合する。
・本剤は、乳房や子宮では抗エストロゲン作用を示し、骨に対してはエストロゲン様作用を発揮する。
・海外のMORE試験では、静脈血栓塞栓症が1%(プラセボの2倍)認められ、本剤の臨床的に重要な有害事象であった。
日本では7,557例の閉経後骨粗鬆症患者を対象にした市販後3年間の特定調査成績における静脈血栓塞栓症の発現率は0.2%であった。また、同じ調査における75歳未満と75歳以上の有害事象発現率(静脈血栓塞栓症と心血管系)は同等であった。 

評価
骨密度:上昇効果がある(A)
椎体骨折:抑制する(A)
非椎体骨折:抑制する(B)
大腿骨近位部骨折:抑制する(C)

個人的見解
ビスホスホネート薬とは違い、長期に服用しやすい薬であって骨密度上昇効果や椎体骨折抑制効果が十分に期待できる薬です。
さらに、MORE試験、CORE試験、RUTH試験のメタアナリシスによってあらゆる原因による死亡率を10%低下させることが示されていることも有意な点です。
しかし、バゼドキシフェンが発売されたため、効果においてはどうしてもバゼドキシフェンに劣ってしまいます。

バゼドキシフェン(先発品:ビビアント):SERM

特徴
・骨格系および脂質代謝に対し、選択的にエストロゲン作動薬として作用する一方、乳房組織および子宮内膜組織に対するエストロゲンの好ましくない作用を示さないことを特徴としている。
・海外では、閉経後骨粗鬆症患者7,492例を対象に本剤を3年間投与することによる骨粗鬆症治療効果の検証を目的として、大規模なプラセボ及び本剤対照、国際共同無作為化二重盲検試験(海外第Ⅲ相試験)が実施された。さらに、当該試験では投与期間を7年まで延長した継続試験が実施された結果、本剤の長期にわたる安全性と効果の持続性が確認された。 

評価
骨密度:上昇効果がある(A)
椎体骨折:抑制する(A)
非椎体骨折:抑制する(B)
大腿骨近位部骨折:抑制する(C)

個人的見解
ビスホスホネート薬と同様な椎体骨折抑制効果が期待でき、ビスホスホネート薬と違い長期に服用しやすい薬です。
そして、大腿骨近位部骨密度のTスコア-3SD以下の高リスクな方への非椎体骨折抑制効果がラロキシフェンよりも優れているという海外第Ⅲ相試験の結果があります。
それらから、椎体骨折リスクの閉経後骨粗鬆症において第一選択薬になる薬と思います。
ただ、非椎体骨折や大腿骨近位部骨折に対する効果では、十分なエビデンスが得られていないため、アレンドロネートやリセドロネートに及びません。

アルファカルシドール / カルシトリオール:活性型VD製剤

アルファカルシドール
カルシトリオールのプロドラッグで、肝臓で25位が水酸化されてカルシトリオールに変換される。

カルシトリオール
ビタミンD3の最終活性化物

特徴
・カルシトリオールは、小腸からのCa吸収促進を介したCa代謝調節作用と副甲状腺ホルモンの生成・分泌抑制、および直接骨代謝調節作用がある。 

評価
骨密度:上昇するとの報告がある(B)
椎体骨折:抑制するとの報告がある(B)
非椎体骨折:抑制するとの報告がある(B)
大腿骨近位部骨折:抑制するとの報告はない(C)

個人的見解
小腸でのカルシウム吸収を増やす効果としてはエルデカルシトールと大きな違いはないと思います。
しかし、エルデカルシトールの方が骨密度上昇効果、腰椎骨折効果、前腕骨骨折の発生抑制効果が優れています。
そのため、エルデカルシトールが発売されてからはどうしても選択されるケースが減ってしまいます。
ただ、アルファカルシドールには「小児用量」の記載があるため、小児に使用できる点はエルデカルシトールとの差別化になります。また、骨粗鬆症以外への適応もあるため、使用する幅が広いお薬です。

エルデカルシトール:活性型VD製剤

特徴
・カルシトリオールの誘導体である。
・アルファカルシドールを対照とした国内第Ⅲ相臨床試験において、骨密度上昇効果および骨折抑制効果が検証されている。
この結果ではエルデカルシトールがアルファカルシドールよりも優れた骨密度上昇効果を持つことが確認された。
さらに、腰椎骨折抑制効果、前腕骨骨折の発生抑制効果がアルファカルシドールよりも優れている。 

評価
骨密度:上昇効果がある(A)
椎体骨折:抑制する(A)
非椎体骨折:抑制するとの報告がある(B)
大腿骨近位部骨折:抑制するとの報告はない(C)

幅広い年齢層と重症度で臨床試験が実施されており、アルファカルシドールを上回る成績が得られている。
骨粗鬆症患者全般に応用可能であり、高カルシウム血症に注意し臨床検査を適宜実施しつつ投与する。

個人的見解
・骨密度上昇効果や椎体骨折抑制効果から、性型ビタミンD3製剤の中では第一選択薬と思います。
さらに、ジェネリック医薬品が発売されたこともあり費用面を考慮しても選択しやすくなっています。

メナテトレノン:VK製剤

特徴
・天然のビタミンKにはビタミンK1(フィロキノン)とビタミンK2(メナキノン)の2つがある。
ビタミンK1は緑黄色野菜などから摂取されるのに対し、ビタミンK2は腸内細菌によって合成されるか、あるいは納豆などの食品から摂取される。
ビタミンK1およびビタミンK2はメナキノン4となって組織で作用するとされるが、メナキノン4はビタミンK1の側鎖の置換によって体内で合成されるので、ビタミンK1が不足すればK2も不足する。
・ビタミンK不足の高齢者では大腿骨近位部骨折の発症率が高い。
・骨粗鬆症性骨折の既往のある患者や椎体骨折のある女性では血中ビタミンK1濃度が低い。
・高齢女性においてビタミンK不足の指標である低カルボキシル化OC(ucOC)高値は、骨密度と独立した大腿骨近位部骨折の危険因子である。
・ビスホスホネート薬服用中の閉経後骨粗鬆症患者においてucOC高値は骨折の危険因子。
・メナテトレノン投与でucOCは低下する。 

評価
骨密度:わずかではあるが腰椎骨密度の上昇効果がある(B)
椎体骨折;抑制するとの報告がある(B)
非椎体骨折:抑制するとの報告がある(B)
大腿骨近位部骨折:抑制するとの報告はない(C)

個人的見解
骨粗鬆症治療薬において一番手、二番手になる薬ではない様に思います。
ただ、ビタミンKが不足した高齢者では大腿骨近位部骨折の発症率が高いとされています。なので、ビタミンKが少ない骨折リスクの高い高齢者には使用する価値があると思います。

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